東京2020 を通して新しい観戦のあり方を提案[NTT]

インタビュー
本記事は2021年8月31日発行の季刊誌『EventBiz』vol.24で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

『EventBiz』vol.24|特集① イベントはテクノロジーで“こう”変わる
いかに驚きや感動を与え、体験価値を向上させるか。イベント主催者の使命達成を支える立場として、技術者たちは日々イベントテクノロジーの開拓に奮励する。特集ではテクノロジーの使い手と作り手にフォーカス。テクノロジーを使ったユニークな発想や体験のほか、それらを実現させた数々の技術を紹介する。

東京オリンピック・パラリンピックが9月5日に幕を閉じる。この国際的なビッグイベントをひとつの大きな節目として捉え、技術に磨きをかけてきた企業は少なくない。NTT もまた、強みである通信・伝送技術を活かし、新たなイベント体験を提供した。同社が開発を手掛ける「Kirari!」と「ディスプレイボット」について話を聞いた。

(L→R)千明 裕 氏(NTT 人間情報研究所 サイバー世界研究プロジェクト 主任研究員)、鈴木 督史 氏(NTT 人間情報研究所 サイバー世界研究プロジェクト 研究主任)、長谷川 馨亮 氏(NTT 人間情報研究所 サイバー世界研究プロジェクト 研究員)

Kirari!

○空間をまるごと伝送

NTTが提供する「Kirari!」。開発を手がける長谷川さんは「Kirari!」について「超高臨場感通信技術という、ライブやスポーツなど、ある空間で行われているイベントを別の空間に転送できる技術」と表現する。東京オリンピック・パラリンピック開催を機に2015年に開発が始まったというこの技術は「NTT の通信技術力を使い、映像や音声だけでなく空間をまるごと伝送できないか、何か新しいことをできないか、という発想から生まれた」そうだ。

特徴は大きく3つ、①映像と音声情報の収集・加工②リアルタイム同期伝送③演出・再現で、これらを実現するさまざまな技術が集まったサービスだ。「Kirari!」を構成する具体的な技術は、クロマキー撮影でなくても、動いている対象だけを切り抜いて映像情報をインプットすることができる“任意背景リアルタイム被写体抽出技術”や複数の高画質カメラ映像をつなげて合成し、高精細かつ広視野角のワイド映像をリアルタイムで生成する“超ワイド映像合成技術”、“超高臨場感メディア同期技術(Advanced MMT)”などがある。

○東京2020の競技観戦で採用

「東京2020オリンピック競技大会」は、「Kirari!」の技術を披露する晴れの舞台となった。採用された競技はセーリングだ。ドローンや船に搭載した複数の4K カメラで撮影した競技映像を“超ワイド映像合成技術”により合成し、Advanced MMT とNTTドコモの5G 通信を用いて映像を海に浮かべたワイドビジョンにリアルタイムで映した。千明(ちぎら)さんは「セーリングの観客やチーム関係者は双眼鏡を使ってレースの模様を観戦・把握する。今回はワイドビジョンに映し出したことで、関係者は双眼鏡を使うことなく、チームの状態を把握できていた。残念ながら無観客となったが、新しい観戦体験を提供できた」と振り返る。映像は海上だけでなく、東京ビッグサイトに設けられたメインプレスセンターにも同様の技術を用いて中継。ワイドビジョンは55m と大型で、解像度は12Kと大容量だ。「これほどの映像データは誰も伝送したことがなかった。「Kirari!」の通信技術やNTTドコモの5G 回線を活用することで実現に至った」(千明さん)。