必要なんです、トイレ ~屋外イベントのトイレ事情~

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本記事は2016年5月31日発行の季刊誌『EventBiz』vol.3で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

10年前に比して格段に増えた食イベントだが、「食すれば、排す」のは自然の摂理だろう。そこで欠かせないのがトイレだが、屋外でトイレに行こうと思っても、たいていは行列ができていたり、汚い個室でどんよりした気持ちになる。だが、ちょっと視点を変えてみると、イベント現場におけるトイレ事情は、奥深い世界が広がっているのだ。

屋外イベントのトイレの現状

最近のトイレ事情

いまやトイレは温水シャワーがついた便器(温水洗浄機能付様式便所)が当たり前の時代であり、オフィスや自宅のトイレは“快適空間”といえる。20年前と比していかがであろう。われわれの日常生活の中でトイレ空間における快適・清潔さを考えてみると、暗い・汚い・臭いの代名詞であったトイレは明らかに進化し、その種類や形態も多様化 ※1 している。さて、それでは「公衆便所」はどうか。開国の地・横浜が発祥の公衆便所 ※2 ではあるが、屋内トイレから一転し、現代でも臭い、汚いという印象は完全に払拭できていない。しかし、快適さを向上させる取り組みは昭和50年代から本格的にはじまっており、トイレに関わる各団体の啓発や市民活動が活発化した ※3 。以来、公園・駅などでの公衆便所に設置されている便器、便座の進化をはじめ、しゃれたデザインをほどこしたトイレ建屋などの開発など、時代とともにトイレ空間の快適さは飛躍的に向上している。

快適さへの追求は続く。屋外でのトイレといえば仮設トイレや簡易トイレが挙げられるが、その普及・開発も進んでいる。特に日本では阪神・淡路大震災を契機に、災害用トイレの大切さもライフラインと同様に重視されるようになり、東日本大震災や先日発生した熊本地震でもこれまでの教訓が活かされ、被災地で利用されている。

©NPO 法人 日本トイレ研究所(災害用トイレガイド Web より転載)

屋外イベントの現状

それでは屋外の食イベントやフェスティバル、スポーツイベントで見かけるトイレ事情はどうだろう。迷惑な話ではあるが、大型イベントの開催地の近くにコンビニや大型商業施設があれば、清潔な水洗トイレを求めて拝借する来場者が多いのは事実である。さらに数十万人規模の大型イベントになると、公衆便所や商店街の店舗、近隣ビルを管理する事業者らが連携し、地域ぐるみでトイレ数を確保して対応する場合もあるだろう。が、このように皆でトイレ環境を整えながらイベントを盛り上げる取り組みは、全国的な知名度の高い札幌の「雪祭り」や「YOSAKOI ソーラン祭り」など ※4 、地域密着型イベントに限られてしまい、数少ない。多くの屋外イベントでは複数台にわたり設置される仮設トイレで長い列に並ぶことになる。

今後、ぜひ待ち時間にこの仮設トイレを注意して見て欲しい。注目点は、例えば設置方法だが、従来からよく見かける排泄物を真下の貯蔵タンクに落とすタイプのトイレもあれば、特殊な技術を使って離れた場所に排泄物を移動させ貯めるタイプのもの、あるいは直接下水管とつないで排泄物をそのまま流すタイプなどあり、臭いの違いの差に気づくに違いない。また、仮設トイレは便座とそれを囲む壁の構造もほぼ同じに見えるが、材質や大きさも微妙に違うのである。

場合によっては常設トイレと変わらないほど豪華なトイレも見受けられるが、短期間で設置、撤去しなければならない屋外イベント会場では、経費の面で折り合いがつかない場合が多く、作りこんだトイレに出会う機会は少ない。

※1 トイレの種類= トイレの種類は多く、呼称はさまざまであり、各人が抱くイメージもバラバラだ。ここではトイレ研究所が実際に開発されている製品をベースに分類した「災害用トイレの分類」を掲載した。 ※2 谷直樹・遠州敦子『便所のはなし』(鹿島出版会、1987年)P.86-87) ※3 山下了『現代のトイレ事情』(東京法令出版、2000年、以下『現代のトイレ事情』)P.17 ※4『現代のトイレ事情』PP.234-256