[連載]「実践で役立つソリューション紹介~オペレーション」ICT が社会を、イベント現場を変えている[ユニバーサルイベント協会・内山 早苗 氏(寄稿)]

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本記事は2016年8月31日発行の季刊誌『EventBiz』vol.4で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

ポケモン GO が大きな社会現象を起こしている。自分の状況を FB にアップしたりみんなで公園に集まったり、周り中の人がこのソフトを楽しんでいるように感じる。道行く人たちが手元のスマホを見ながら歩き、ものや人にぶつかったり、車道に出てしまったり溝に落ちたりと、問題も噴出している。昭和前半世代までもがやっている。このポケモン GOのもととなっている Ingress(イングレス、実際の街を歩くことでポイントをゲットする拡張現実ゲーム)も世界で1,300万ダウンロードされているとのこと。このゲームを活用した地域活性化のイベントは、沖縄や各地で多くの集客を呼んだという。情報テクノロジーを介してのコミュニケーションが当たり前になってきた今、それは人々の行動様式を変えたりもする。もともとイングレスの開発は、引きこもってゲームをしている人たちの習性を変えることも狙いのひとつだったと聞く。まさにその狙いは成功し、一人で、そして仲間とつながって全国どこへでも出かけていく若者層を増やしたといえる。非日常を体験するというイベントのオペレーションにとっても ICTを活用しない手はない。この ICTは、実はユニバーサルイベントの推進をさらに楽々と身近なものにすることに大きく貢献している。このテーマの最終回では、イベントのオペレーションで画期的に有効なソリューションである、フラットナビUDCast を紹介したい。

凸凹のない点字ブロック、フラットナビ

見えない人にとって点字ブロックはなくてはならない重要なものだが、実はあの凹凸は、車いすの人にとっては移動の困難さが増す邪魔者なのである。車いすの人だけでなく、ベビーカーを押している人や大きな旅行鞄を押している人にとっても同様に歩きにくいものである。そんな状況を何とかしたいと生み出されたのが「フラットナビ」。厚さ数㎜、30㎝四方のフラットで軽いパネルに電源のいらない IC タグを仕込んで、展示会場やショッピングセンター、企業のホールなどに置き、そのタグの情報の読取機を足や腕に付け、スマートフォンなどで情報を音声や文字に変えて利用者に伝えるという仕組み。

このパネルの裏に粘着テープなどをつけ、その時、その場でどこにでも設置できるという便利さがある。粘着テープ等で貼り付ければよいため、必要な時に一時的に設置することも可能。まさにイベント会場の情報保障として使いやすい。点字ブロックのように見えない人だけが使うのではなく、大きな会場で、どこに何が展示されているか、トイレはどこか、フラットナビの上を歩いていけば、必要な情報が自分のスマホで聞けるし読むことが簡単にできる。見えない人だけでなく、多くの人が快適に迷うことなくイベント会場を楽しめる。イベント現場の人件費削減にも大いに役立つのではないか。

外国人や見えない人、聴こえない人が情報をキャッチできる UDCast

有名な人気アニメ「ワンピース」(東映)が7月23日から全国345館で公開された。そのうちの140館では、セリフ以外の状況にも音声ガイド(副音声)がつけられ、目の見えない、見えにくい人にも映画を楽しめるという。これだけの規模で公開初日から音声ガイド付き上映が行われるのは史上初の試みである(音声ガイド付き上映対応館は順次増加予定)。この音声ガイドを提供できるアプリが、スマホやタブレットに無料でダウンロードできる UDCast だ。

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