さまざまな垣根を越え、すべての人にエンターテインメント体験を届ける[サンシャインシティ・迫坪 慶子 氏]

インタビューARCHIVE
本記事は2020年11月30日発行の季刊誌『EventBiz』vol.21で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

『EventBiz』vol.21|特集 2021年イベントトレンド予測
新型コロナウイルスの影響から、2020年の春先から早急な変容を求められたMICE業界。現在も感染防止のケアだけでなく、代替案となるオンラインやハイブリッドといった新様式への対応が進んでいる。さらにデジタル・トランスフォーメーション(DX)やニューノーマル体験、SDGsなど、主催者は日々様変わりする社会情勢に対応した変化が求められる。そこで今回は2021年、イベントを開催するうえで押さえておきたいトレンドを紹介。変化に素早く対応した企業事例や、まだイベント業界に浸透しきれていないものの、今後注目が高まるコンテンツを紹介する。

ニューノーマル社会。これまでとは異なる体験が求められるなか、サンシャインシティは10月に新たなサービスとしてイベント特化型「多機能XRコンテンツ配信プラットフォーム」の開発に着手することを発表した。このサービスは“すべての人にエンターテインメントを届ける”という新型コロナウイルスの感染拡大対策にとどまらない思いから企画・開発された。発案者で開発を手掛けるコンベンション事業部の迫坪慶子サブリーダーに話を聞いた。

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─今回発表されたサービスはどのようなものでしょうか

開発したのは VR や AR といった様々な XR コンテンツを配信するプラットフォームです。現在流通しているイベントアプリの多くは、VRや AR、動画配信など機能ごとに個別のアプリをダウンロードする必要がありますが、「多機能 XR コンテンツ配信プラットフォーム」はイベント主催者が開催したい理想のオンラインイベントを AR や VR のほか360°パノラマ実写空間、CG 空間、2D 動画、ライブ配信といった技術を使用し、一つのアプリ内でまとめて展開できるものです。

迫坪 慶子 氏(サンシャインシティ)

─開発に至った背景について教えてください

これまで多くのイベントを開催してきましたが、イベントに関わる中で感じていたのは、リアルイベントが持つ魅力の裏に“すべての人に100%エンターテインメントを届けられていない”という弱みがあるということでした。リアルイベントは場所と日時が限定的という特徴を持ちます。だからこそ人が集まると考えられますが、裏を返せばイベントに参加したくても「遠方に住んでいる」「休みが取れない」「入院中である」などさまざまな理由で参加できない人がいるということです。またサンシャインシティでは多くのアニメイベントが開催されます。当然ながら海外のアニメファンも来場し、会場で外国語が聞こえることは珍しくありませんが、多くのイベントは多言語対応しきれていません。翻訳スタッフの人件費等を考えると、改善も簡単ではなく、言語の壁が存在しているのも事実です。

ファンの人たちがイベントの魅力を100%感じきれていない状況をもどかしいと思っていた矢先、新型コロナウイルスの影響が各所に出始めました。イベントは人が集まることで収益が生まれますが、集まること自体ができなくなるという苦しい状況となりました。多くの主催者はオンラインイベントを視野に動き始めましたが、WEB システムやアプリの開発というのはイベントの主催・運営と畑違いの仕事です。開発会社を探し、イベントの魅力やファンのニーズを開発会社によく知ってもらい、機能を作り直したり、コンテンツごとで配信方法を変えたり……と、導入のハードルが高いという話を聞いていました。

そこでプラットフォームを作るという発想に至りました。コンテンツのオンライン化により、行きたくても行くことができなかった人たちにエンターテインメント体験を提供でき、さらにイベントのノウハウを持つサンシャインシティの目線で作ったプラットフォームは、オンライン化を目指す主催者の負担軽減に貢献できます。

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