宮城・仙台市に本社を構え、製造業を営むみやちゅうは8月、東京ビッグサイトで開催された「賃貸住宅フェア2024」に初出展し、新たなビジネス機会の創出と企業ブランドの強化を実現した。出展背景には地元・宮城で得た展示会のノウハウがあり、地域内の学びが都市圏での成功につながる好例となった。取締役営業本部長・畠山正樹氏に話を聞いた。
自社製品の認知度向上を目指して
みやちゅうは、これまで建築資材や園芸資材など多岐にわたる製品を手掛けてきた。従来は他社のブースに製品を提供する立場だったが「自社製品を自分たちの手で広く知ってもらいたい」という想いが高まり、今回初めての自社製品出展に臨んだ。
今回の展示会では、宮城県の優れた工業製品を県内外に発信する認定制度「みやぎ優れ MONO」で認定を受けた「天井制振材」を展示。集合住宅における音の問題を解決するため、宮城県産の無機系粒状体ゼオライトを独自の区画構造袋に封入する技術で開発された製品だ。
宮城県での講演会が後押しに
出展準備の段階で、みやちゅうは夢メッセみやぎで今年3月に開催された「夢メッセみやぎ講演会」に参加し、中小企業向けのブースデザインや装飾手法を学んだ。この講演会で得たノウハウは「ペンギンメソッド*」と呼ばれ、限られたリソースで効果的に展示会を運営するための具体的なポイントが示された。
例えば、通路際の壁に簡潔な製品説明を掲示する、繰り返し使用可能なタペストリーを使ってブースに統一感と高級感を演出するなどの工夫が含まれていた。みやちゅうでは、実際のブース設営に際し、宮城県内の印刷会社に依頼したタペストリーを活用してコストを削減しながらも高品質な展示空間を実現した。
宮城発の技術力が東京で評価
「賃貸住宅フェア2024」会期中、みやちゅうのブースには多くの来場者が訪れ、通路から見えやすい位置に設置したのぼりやタペストリーの色彩に工夫を凝らし、ブース全体を照らす LED 投光器の導入も好評を得た。照明については、今回は電球色を使用したが、次回以降はブース全体のカラーに合わせ、昼光色に変更する予定だという。畠山氏は「遠くからのぼりを見つけて『あった!』と駆け寄ってきてくださる来場者もいて、自社ブースが役割を果たせたと感じました。来場者の反応が良くて、準備していたチラシが足りなくなるほどでした」と振り返る。
展示会では83件の情報交換が行われ、そのうち8件が具体的な商談に結びついた。また出展企業同士の交流も活発で、他企業から共同開発の提案を受けるなど、新たな企業連携の可能性も生まれた。さらにブースの設営に自社製のポール取り付け金具を活用し、のぼりの展示に使用したことで、隣接する出展者からその制作方法について質問を受ける場面もあった。ものづくり企業としての強みを再認識する機会にもなったという。
展示会を通じた地域経済活性化へのビジョン
今回の展示会出展は、宮城県の企業が首都圏での認知度を高めるだけでなく、地域内の他企業にとっても展示会出展の可能性を示すものとなったといえよう。同社は、展示会を単なる製品 PR の場として捉えるのではなく、企業の技術力や取り組みを知ってもらい、他企業との協力関係を築くためのネットワーキングの場としても位置づけている。
みやちゅうは今後も立体的なディスプレイや SNS、動画を活用した事前告知など、集客効果を高める工夫に関心を寄せており、引き続きブース作りのノウハウを深めていく。初めての展示会出展は、企業の姿勢を見せる挑戦であり、地域で得た学びを首都圏で実践し成果を上げる新たなステップとなった。
畠山 正樹 氏
みやちゅう
取締役営業本部長
第14回夢メッセみやぎ講演会
みやぎ産業交流センターが主催する講演会。展示会や見本市の有用性を再確認し、展示会場「夢メッセみやぎ」をビジネスの場としてより効果的に活用することを目的に開催。2024年3月21日、夢メッセみやぎで第14回が開催され、展示会出展の実践的な活用方法や成功事例が共有された。
賃貸住宅フェア2024 in 東京
全国賃貸住宅新聞社が主催する展示会。不動産会社や地主、家主などを対象に賃貸住宅に関する最新の製品やサービス、情報が一堂に会する。出展することで業界内での知名度向上や顧客との接点創出、製品やサービスの販売促進が期待できる。2024年8月6日・7日の2日間、東京ビッグサイトで開催された。