地域性をアート化。「Stone -HAKUの仕業(しわざ)展-」最新デジタル演出解説レポート

レポート

クリエイティブブランド「HAKU(ハク)」は2021年11月23日・24日の2日間、スターツおおたかの森ホール(千葉・流山市)で「Stone -HAKUの仕業展-」を開催した。展示されたアート作品の演出意図とともに当日のもようをレポートする。

クリエイターが本気でやりたかった映像・照明・音響表現

シンユニティグループのクリエイターらが所属する HAKU は、クライアントワークにとらわれず、主体的にアート作品を発信していくことを目的に2020年12月に設立した。今回のアート展は HAKU が行う初めてのイベントである。

会場である流⼭市を取り巻く自然環境や空気感をアート作品として展開する中で、コンセプトとなったのは音の可視化。“ゆっくりと移動しながら変形していく石が聞いているであろう”音を、独特かつ最新の映像表現で来場者を楽しませた。

217㎡の会場に13台もの大型プロジェクターを設置し、天井・床・壁のすべてに映像を投影した。当日は、約25分の長尺な映像コンテンツにもかかわらず、最後まで視聴する来場者が多かった。その来場者の満足度向上に一役買ったのがインタラクティブ(双方向性)な体験である。来場者はリアルタイムでトラッキングするセンサーを持ち、自身の動きによって移り変わる映像を楽しむことができた。

会場内には石を積み上げたオブジェがいくつか展示されており、使用した石はすべて利根川水系のもの。富士山や利根川源流近郊、鬼怒川源流近郊、利根川と江戸川の分岐点、おおたかの森近くの江戸川が実際にある位置と方角に合わせてレイアウトされている。

今回使用した SE や映像は、HAKU がフィールドワークを行った各地で録音・録画した素材を元に制作した。

演出意図を聞く

各コンテンツの紹介と演出を手掛けたHAKU・大内清樹氏の解説を掲載する。

大内 清樹 (おおうち・きよき)
3DCGクリエイター クリエイティブディレクター

インテリアデザインを10年間行い再度大学に入学し映像の道に。アーキテクチャ的発想から空間と映像をゆうごうさせる映像作品に取り組む。CGやVFX、Motiongraphicsなど様々なスタイルをミックスさせた制作を行う。映像制作を中心にランドマーク、テーマパーク、博物館、店舗などの空間全体の演出をトータルでディレクションする。

波紋 床に石を置き鑑賞する枯山水的鑑賞方法から着想を得ました。動的な要素をグラフィックに取り入れ、石の周りを波紋のグラフィックで囲い、静と動のバランスをホール内に表現しました。


 絶え間なく流れる水。岩や石、人があっても水は流れ続けます。岩や石の描画は一切出てきませんが、そこを這う水の流れにより、自然と岩の荒々しさが見えてきます。


積層 積層から当時の環境や地形を想像するように、モノトーンの映像が色付き、部分的に垣間見ることができます。床には、関東地方のCG を石の配置に割り当て、低いほうへと流れていく水のように、標高に沿ってスライスしていった模様が現れます。


岩肌 1つの大きな岩なのか、細かい石の集合体なのか。無機物でありながら有機的な表情を見せる岩そのものに着目。部分的な岩肌の荒々しさと美しさを見せながら、詳しく見ようと思っても把握できない全体像を表現しています。


マイルストーン 白いラインはフィールドワークの経路をマッピングし、3D モデリングしたもので、実際には長距離の移動も、線一本に引き延ばした時のシンプルさと、そこに出てくる富士山や大水上山などの急激な高低差の形状が、地形の面白さを再確認させます。


 石自体が生きているかのように流れ動きながら、互いにぶつかり合い、変形していきます。その中をのぞくように近づいていくと、ぼんやりと発光しながら石は小さく変形し、また違った雰囲気へ変わります。


水中 石を取り巻く水中をモチーフにしたシーンです。上流で見られる角ばった岩々は、下流に向かうにつれて石同士がぶつかり合い、丸くなっていきます。上流から河口までの石の新たな感覚の発見を目指しています。