【講演会レポート】ブースデザインから学ぶMICE施設の出展アイデア[夢メッセみやぎ]

レポート

2024年3月21日に夢メッセみやぎで「第14回夢メッセみやぎ講演会」が開催された。講師は展示会デザイナーの竹村尚久氏(スーパーペンギン)。出展者の課題解決に焦点を当てた内容であったが、今回特筆すべきは、東北のMICE施設である「夢メッセみやぎ」の出展を想定し、実際にデザイン・設営したブースを教材として利用した点である。「出展者自身によるデザイン」と「プロのデザイナーによるデザイン」の2つのブースを並べ、比較することで、ブースデザインの根幹が学べる画期的な内容であった。また、MICE施設の出展を具体例としたことで、間接的に「MICE施設の魅力をどうPRするか」というテーマに迫っていることにも着目したい。そこで本レポートでは、①実践を通じた学び、②出展者の創意工夫、③プロフェッショナルな視点、④MICE施設の活用とPR、という4つの視点で講演会を振り返る。

本記事は専門紙『見本市展示会通信』で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。
出展者自身によるデザイン

講演の見どころは「出展者自身によるデザイン」が失敗例として扱われていないことだ。出展者の立場である阿部清香氏(みやぎ産業交流センター/夢メッセみやぎ)が手掛けたブースは、竹村氏が普段、著書やセミナーなどで提唱する理論を実践することに努めたデザインであった。具体的な再現は以下の通りである。

  • 来場者が遠くからでも見える位置に説明パネルを配置する。
  • 「東北最大の展示会場」という強みを前面に打ち出す。
  • 鮮やかなビジュアルアイデンティティ(VI)を用いて、目立たせる。
  • 配布資料を通路側に設け、手に取りやすくする。

加えて今回、阿部氏が最も苦労した点は、来場者のブース滞在時間を延ばすための工夫だという。「長文の説明パネルが読まれることは難しいと聞いていたので、〝触ってみたくなるような説明パネル〟を考えてみました」(阿部氏)。展示台には、複数の説明パネルが積み重ねられた模型が置かれており、これらは施設を上空から見た形を模したものだ。

今回制作した「触ってみたくなるような説明パネル」

また壁面に掲げた説明パネルには「仙台空港から何分?」「柱の数は?」といった質問文のみで、答えは示されていない。これは興味を持った来場者が話しかけてくることをねらった仕掛けで、竹村氏もアイデアを高く評価していた。

プロのデザイナーによるデザイン

一方、竹村氏の「プロのデザイナーによるデザイン」は、出展者自身によるデザインの発展形を目指しており、新しいアイデアによって選択肢が広がることが強調されていた。たとえば、以下のような提案があった。

  • B1パネルをスエード生地のタペストリーに変更して高級感を出す。
  • 展示台に箱型の棚を追加して、収納スペースをつくりつつ高低差を設ける。
  • スポットライトをLED投光器に変えて、より明るい空間をつくる。
  • SDカード対応のスピーカーを使い、BGMを流す。

少しの変更で大きな印象の違いを生む、真似したくなるようなアイデアがいくつも示された。さらに、失敗するブースの特徴や無形商材を扱う場合の展示方法、来場者に資料を持ち帰ってもらうためのテクニックなど、さまざまなテーマで解説し、2時間の講演を締めくくった。今回の講演会は、出展者への支援とあわせて、「夢メッセみやぎ」の特性や魅力を直接的にPRする機会となり、施設の利用促進戦略として有意義な取り組みであったことがうかがえる。

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