主催者のありかたを示すために[コングレ・西村 郁子 氏]

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本記事は2019年11月30日発行の季刊誌『EventBiz』vol.17で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

あらゆる思想を尊重した食事のなかには個々の思想だけでなく、主催者としての主義や姿勢を反映したものが存在する。これらもまた多様な制限を持ち、ときには社会情勢に応じて変化を求められることもあるという。長年、海外国際機関が主催する会議や政府系会議の運営を手掛け、これまで多くの食の要望に応えてきたコングレの西村郁子氏に話を聞いた。

西村 郁子 氏(コングレ)

─フードダイバーシティへの対応で印象的だった会議について教えてください

2017年の第50回アジア開発銀行(ADB)横浜年次総会です。ADB総会は毎年開催され、10年に一度日本で行われる会議です。この年の会場はパシフィコ横浜で、約100か国から5,000名以上が参加しました。この会議で主催者がこだわったのはサステナビリティでした。どの会議も開催にあたり、主催者から多くの要件が提示されるのですが、ADB はサステナビリティに関する要件が細かく設定されていました。食事や環境への配慮について記載されたもので、設定した目標に向かってこれくらいやりましょう、というものです。食事に関しては複数の項目がありましたが、なかでも『レッドリスト(国際自然保護連合が作成した絶滅のおそれのある野生生物のリスト)の食材を使用してはいけない』という規定は他の国際会議で言われたことがなく、印象に残っています。

─普段口にするものでレッドリストに載っている食材ってあるのでしょうか。使用禁止は当たり前のような、もともと使っていないような気がします

実は、フカヒレがそれにあたります。要件の使用禁止例としても記載されていました。横浜で開催しますから、同伴者プログラムとして横浜中華街での食事も用意していました。レストラン側はおもてなしするうえで最高の一品としてフカヒレを出したいところですが、この会議ではそれが NG だったのです。ADB はいろいろな国で毎年開催しているので、日本だから、横浜だから……と開催地によって制限を緩和することはなく、万国共通の規定になっているのだと思います。

フカヒレに使用されるサメのなかにはジンベイザメやヨシキリザメなど絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されるものが存在する。

─ほかにも食材について指示はありましたか

地産地消の食材を使うように指示されました。運搬環境はもちろん、ローカルへの配慮も含まれていたと思います。食事の何パーセントが関東の食材なのか確認を受けましたね。

─食材以外ではいかがでしょう