消毒作業の負担軽減にも 非接触「空中ディスプレイ」の可能性[アスカネット]

インタビュー
本記事は2021年8月31日発行の季刊誌『EventBiz』vol.24で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

『EventBiz』vol.24|特集① イベントはテクノロジーで“こう”変わる
いかに驚きや感動を与え、体験価値を向上させるか。イベント主催者の使命達成を支える立場として、技術者たちは日々イベントテクノロジーの開拓に奮励する。特集ではテクノロジーの使い手と作り手にフォーカス。テクノロジーを使ったユニークな発想や体験のほか、それらを実現させた数々の技術を紹介する。

SF 映画や小説で空中に映し出されたディスプレイをいじる登場人物にあこがれたことはないだろうか。キャラクターたちが空中のホログラムをいじって、ハンドサインでデータベースにアクセスする姿は、いつでも SF ファンの心を刺激する。製品発表会や展示会などで近未来の世界観を表現するときにも、よく見かける演出だ。この憧れの「空中ディスプレイ」だが、さまざまな企業の技術で実現されてきた。さらにコロナ禍によって、演出としての華やかさだけでなく、タッチパネルに替わる非接触のインターフェースとして安全や感染対策の面から注目されている。空中ディスプレイのパイオニアであるアスカネットの東條弘幸氏と山本和宏氏に最新の技術と活用事例を聞いた。

夢の空中ディスプレイ

東條 弘幸 氏(左)と山本 和宏 氏

アスカネットはインターネットでフォトブックを作成する事業や葬儀に関する写真動画の加工配信など、画像や映像に関する事業を幅広く行っており、空中ディスプレイ「ASKA3D プレート」もそのうちのひとつだ。

液晶ディスプレイなどから出た光線を、ガラスや樹脂でできた特殊なプレートを通じて反射させ、空中で結像させる。すると、まるで観測者の目にはまるで映像が浮かんでいるように見える。従来の疑似ホログラムやインテグラルフォトグラフィー(立体写真技術)などとは異なる新しい空中結像技術で、アスカネットが特許を取得している。東條氏は製品の特徴について「1枚のプレートを光源上または前に置くだけで、簡単に映像を浮かび上がらせられることができ、ハーフミラーやそのほかの設備が必要な他社製品と比べて、手軽かつ省スペースで設置できます」と話す。

開発者の大坪誠氏は元々外部の研究者であり研究を行っていたが、工業化のためにアスカネットに入社し、「ASKA3D プレート」が生まれた。大坪氏が基となるアイデアを閃いたのは、出張中に乗った新幹線の中だった。窓越しに流れてゆく風景を眺めながら、「ガラス越しに透過してくる光を集めて、別の場所に持ち運べないだろうか?」と思い立ち、研究開発を始めたという。東條氏は「常人にはちょっと理解できないですよね」と笑ってみせる。優れたアイデアは、よく思わぬところに転がっているものだ。

シンプルな仕組みではあるものの、製品化するには加工の精度が求められる構造であるため、製造面での課題は山積みだった。試作を繰り返し、ようやく品質とコスト感を達成した今日の「ASKA3D プレート」が完成した。販売開始から数年を経た現在、より映像は鮮明になった。今では大型の映像にも対応できる改良モデルも提供しており、ガラスだけでなく樹脂性モデルの販売もしている。