フランスにおける見本市の現状とこれから[フランス見本市協会・井田 絵里佳]

寄稿
本記事は2021年8月31日発行の季刊誌『EventBiz』vol.24で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

新型コロナウイルスによる未曽有の緊急事態

2020年の年明けだったか、日本で新型コロナが世間を騒がせ始めたのは。フランス見本市協会(以下、当協会)は、毎年2月に各国代表がパリ本部で総会を行うが、この時も2月4日から始まった。パリのホテルで朝食をとっていると、ダイヤモンドプリンセス号のニュースが流れ驚いたが、まだ当時は、相変わらず皆ハグ、握手を繰り返していた。私自身は清掃人のストライキで溢れるゴミに辟易し常に手袋をしていたが、マスクは欧米人には印象がよくないのでせず。

帰国後、欧州の状況が変わり、パリで3月3日から開催予定の複合材料見本市 JEC World 展の渡仏準備をしていたところ、主催者からなんと1週間前に延期の発表。出展者の中には既に渡欧してしまった方もいて申し訳ない限りだが、主催者も刻々と変わる未曾有の緊急事態に発表が最悪のタイミングになってしまった。その直後、3月8日には政府がイベントの禁止を発表、欧州も瞬く間に新型コロナウイルスが猖獗(しょうけつ)を極め、仏では3月17日には第1回目の外出禁止令発令、ロックダウンが始まった。当協会本部からも、スタッフを極力ウイルスに曝すなとのお達しで、日本事務所も急遽、リモートワークとなった。

主催者は努力するもリアル開催を断念

その後、3月の JEC 展はまさかここまでとは思っておらず、5月に延期していたが、多数の出展者の意向をくみ、2021年3月展に移行となった。結局5月11日に最初のロックダウンが解除されても、6月までは見本市は開催されないまま。その間、ロックダウンが解除された途端に再開できるよう、パリの大型イベント会場を管理する VIPARIS では、着々と準備を進めていた。フランスの誇る認証機関ビューローヴェリタスと共同で、SAFE V と言う新しい衛生プロトコルを整え、また一方ではリアルを補完し、かつリアル開催ができなくなった時のセーフティネットとして、デジタルでの発信を強めるため、会場内に TV 局のようなセットを設置するなど、業界も危機感をもって準備していた。

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