空に広がる演出の可能性[NTT ドコモ]

インタビュー
本記事は2021年8月31日発行の季刊誌『EventBiz』vol.24で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

『EventBiz』vol.24|特集① イベントはテクノロジーで“こう”変わる
いかに驚きや感動を与え、体験価値を向上させるか。イベント主催者の使命達成を支える立場として、技術者たちは日々イベントテクノロジーの開拓に奮励する。特集ではテクノロジーの使い手と作り手にフォーカス。テクノロジーを使ったユニークな発想や体験のほか、それらを実現させた数々の技術を紹介する。

「なんか、飛んでましたよ!」。6月30日、横浜赤レンガ倉庫で行われた「NTT Presents 東京2020オリンピック聖火リレーセレブレーション」の一幕、女優の石原さとみさんが感嘆の声を上げた。レーザービームやダンサーとともに登場し、その存在感を放っていた空飛ぶ光の玉。その正体は「浮遊球体ドローンディスプレイ」(以下、「浮遊球体ドローン」)だ。開発・サービス提供を行う NTT ドコモの4名に話を聞いた。

(L→R)山田 和宏 さん(5G・IoT ビジネス部 ドローンビジネス推進担当 担当部長)、岡崎 信二 さん(5G・IoT ビジネス部 ドローンビジネス推進・第三ビジネス推進担当 担当課長)、山田 渉 さん(クロステック開発部 システム企画担当 主査)、小林 史弥 さん(5G・IoT ビジネス部 ドローンビジネス推進・第三ビジネス推進担当)

飛ぶだけじゃない、使い方いろいろ

(L→R)静止時(機械構成)、静止時(LEDテープ点灯)、飛行時(映像表示)

─浮遊球体ドローンについて教えてください

岡崎 弧状の基板に LED を並べた8本の LED テープを回転させることで映像を浮かび上がらせる「残像ディスプレイ」を搭載したドローンです。直径 90 センチ、ドローン本体と LED テープを弧状にしたディスプレイ部、それを守るプロテクタ部で構成されています。ディスプレイ部は半周で 320、全周で 760 ピクセルの映像が投映可能で、1回の飛行時間は3分程度です。

2017年のリリース後から改良を重ね、近年イベントでの利用が増えてきました。機材のみの販売やレンタルは行わず、運用も含めたイベント演出サービスとして提供しています。投映する映像の制作も手掛けています。既存の映像データも使えますが、映像を球体になじませるための編集が必要になります。

─どのような使い方ができるのでしょう

岡崎 ドローンのみを飛ばしてアイコンとして使うこともできますし、演出の一つとして他のテクノロジーと組み合わせることができます。飛ばさず球体ディスプレイとして使うことも可能です。

小林 例えば男子プロバスケットボールチーム「茨城ロボッツ」の試合前に2機を飛ばし、炎やムービングライトなどの演出と組み合わせることで選手入場を盛り上げました。また昨年12月に出展したデザインとアートのイベント「DESIGNART TOKYO」では「BEYOND DISTANCE @ DESIGNART TOKYO 2020」と題してクリエイティブ企業カケザン社とともに出展し、演出で2機を使いました。新しい体験型コミュニケーションを提案する展示だったので、人の高さほどにドローンを固定設置し、リアルまたはリモートで参加した2人の顔を映し、参加者の動きと連動した背景がドローンの奥のドーム型スクリーンに投影されるというものです。

そのほか、7月から東京スカイツリーで開催している「Society 5.0科学博」のメイン展示企画ではキャラクターの顔を映した1機を入り口付近の天井から吊るし、音声を付けて来場者にガイダンスを行いました。

ドローン演出の魅力

─イベントでドローンを活用する効果や魅力について教えてください

山田(和) 演出だけでなく、コミュニケーションツール、サイネージなど、すでにさまざまな場面で活用されていますが、ドローンですから本来は飛行できることが魅力。その価値は追いかけ続けたいというのが我々の思いです。

飛行ドローンの演出といえば先日の第32回オリンピック競技大会(2020/東京)の開会式で使われたインテル社の群制御ドローンが話題になりました。1機をピクセルに見立てて群集になることで映像を作り出すものです。インパクトのある演出が可能ですが、離着陸のスペースの確保、飛行中の通行人の制限など、広範囲に安全管理を行う必要があります。

一方、浮遊球体ドローンは1機で精細な映像を投影でき、限られたスペースで使える点が大きな特徴です。空中で上下左右に動かせるので空間を立体的にみせることもできます。ステージ上や客席前のスペースに配置して飛ばした「NTT Presents 東京2020オリンピック聖火リレーセレブレーション」ではこの強みが活きていました。また平面のディスプレイと違い、どの角度から見ても違和感がないというのも強みで、アリーナのような四方を観客席に囲まれた会場との相性も良いでしょう。

群制御ドローンと浮遊球体ドローンはアプローチが違いますから、どちらが優れているという比較はできません。むしろ両方を使って、それぞれの個性を掛け合わせた演出ができればユニークで新しい空中ショーが実現できると思っています。

─屋内利用の場合、天井高の制限はありますか

山田(渉) アリーナのような屋内での使用ですが、天井高が飛行高度+1mくらい余裕があれば飛行は可能です。パイロットの腕によりますが、これまで一番低い場所では天井高が3mくらいでした。屋内で使用する際は過去の事例に基づいて、主催者や施設運営者と相談しながら、どのような表現ができるかを探ります。

テクノロジーを駆使したイベントの力

─イベントにテクノロジーを加えることでどのような価値が生まれると思いますか

山田(和) オリンピック開催1000日前の記念イベントで、NTTドコモ代々木ビルにプロジェクションマッピングを行いました。それが話題になったことで、イベントの演出が“公共に資する空間演出”として認められ、テクノロジーを使ったイベントを地域活性のために使えるのではないかと、自治体の方が検討するようになったと聞きます。テクノロジーを軸にした空間演出は、空間に新たな価値を付加できるのではないでしょうか。

─今後の展望について教えてください

山田(渉) 新型コロナウイルスの感染拡大が収束し、イベントが復活すればドローンの演出需要はもっと高まると思っているので、エンタメを提供する立場として盛り上げていきたいです。ドローンが持つ可能性は高く、弊社では他にも羽根のないドローンなども開発しています。このようなテクノロジーを提供して、日本のエンタメをもっと盛り上げていければと思っています。

山田(和) 浮遊球体ドローンは演出の表現力を高めることができると思っているので、プロスポーツやライブイベントなど、エンタメ系イベントでの活用の幅を広げていきたいと思っています。

使いやすさも追求していきます。飛行時間や解像度の向上、機体数の充実のほか、来場者の没入感の妨げになりうる点を減らすため、飛行音の静音化やプロダクトデザインの改良にも取り組んでいます。機体数の増加を考えると、現在のパイロット操縦は動きを合わせることが難しくなってきますし、パイロットの人件費もかかってきます。ドローンが活躍する場も増やすためにも、プログラム制御対応も大きな課題です。これからも主催者目線で改良を重ね、その先にいるファン・来場者に高い価値を届けていきたいです。