【イベントの安全・安心】テールゲートリフター特別教育[シミズオクト・高山 英樹](寄稿)

寄稿

本記事は2024年2月15日発行の『見本市展示会通信』vol.916で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は執筆当時のものです。

昨今のエンターテインメントは、クリエイティブな要望を具現化するため、ますます複雑化、高度化している。それに応えるため、弊社では技術力の向上だけでなく、安全における取組みに協力会社とも一丸となり取り組んできた。業界の安全活動を担う「NPO法人 日本舞台技術安全協会(JASST)」の立ち上げをはじめ、日々、現場や工場、輸送での安全について「安全指導室」が中心となり、社内教育を行っている。

そんな中、運送業界においてテールゲートリフターに関わる事故が多発してきたことにより、作業者へ特別教育を行う必要が出てきたとの話が聞こえてきた。その時はまだ、その教育内容なども含め情報が見えていない状況ではあったが、労働安全衛生規則等の一部改正案におけるテールゲートリフター特別教育義務化については、2024年2月より定められることが確定となっていた。その情報をたまたま早い時期に知り得る機会があったのだが、当時はトラック運転者のみに必要な教育程度と認識していた。そのため我が社でも教育する必要があるのかどうかが分かるまでに、少し時間がかかってしまった。

情報を得ていくうちに、操作する人間だけではなく、台車等を昇降板に乗せ、ロックを掛ける作業者も教育対象だと分かった。その理由はとても単純で、これまでテールゲートリフターの機能や特徴、その危険性を十分に理解していないまま使用していたケースが多く、仕組みや正しい使用方法が分からなければ事故が減らないから、というものだ。

しかし、我々の業界は運送業界とは異なる。自社で相当数のトラックを保有していても、そのほとんどは白ナンバーであり、自社の荷物以外は扱わないという前提で、車両導入時からゲート操作や積み降ろし等の業務教育をする事はほとんどない。

この背景には、業界特有の積み降ろし時の状況が関係していると思われる。運送業界では、荷締めも含め現場でそれなりの時間をかけてしっかりと積み降ろしを行う。ルートの配送時間は決まっていても、積み降ろし時間の制約は無い事が多い。

対して我々の業界は、限られた動線と荷捌きスペースに加え、車両を早く出さなければ設営に移れない、などという事態が状態化している。こういった事情から積み降ろしに時間をかけない、という常識が根付いてしまい、如何に効率よく作業を行うかに重点がおかれるため、安全という概念は二の次になってしまったのだ。これは、30年以上この業界にいる私としても、納得してしまう部分もある。

しかし、近年の事故の傾向や質を見ていくと、ここでしっかりと教育することで業界として更なる進化が期待できると確信した。そのため、まずは基本的なことから理解してもらい、安全かつスピード感を持った操作が出来るようにしたいと考えた。

弊社では、安全に関する社内教育はその質と一貫性を担保するため安全指導室が主に行っているが、今回の教育対象者を1000人以上と見込んだため、多数講師制にして効率化を図った。具体的には、講師プログラムを修了させ、安全指導室とともに全社向けの講習プログラムを考案、従業員に向け教育を行う。さらに別途、基本プログラム修了者の中から安全指導室が認定した者のみが参加できる「講師用講習」を実施し、全国各地で講師育成を行った。

講習の質を落とさないことを重視し、いずれも初回は安全指導室が参加して講習内容をチェックし、改善点を指導する仕組みとした。時間や手間がかかっても、教育対象者全員に丁寧な講習を広めていき、事故がゼロになるよう継続していきたいと考えている。

最後に、皆様におかれましてもかなりタイトなスケジュールでの教育普及により、大変ご苦労されていると思います。このテールゲートリフター業務のみならず業界全体での事故が少しでも減らせるよう、今後も一丸となって尽力できましたら幸いです。

高山 英樹(たかやま・ひでき)氏
シミズオクト 第一事業本部 新木場スタジオ制作部 部長
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