日本全体で大阪・関西万博を成功へ[2025年日本国際博覧会協会・森 栄子 氏]

インタビュー
本記事は2022年8月31日発行の季刊誌『EventBiz』vol.28で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

『EventBiz』vol.28|特集① 大阪・関西万博に備えよ!
大阪・関西万博の開催まで残すところ1,000日を切った。東京五輪に続く日本経済発展の起爆剤として期待されている大阪・関西万博だが、その準備は既に本格化し企業は2025年を視野にさまざまな取組みを開始している。本特集では大阪・関西万博に向けた国や企業の最新動向を追った。

2025年の大阪・関西万博まで残すところ1,000日を切った。大阪・関西万博は東京五輪後の日本経済をけん引する超巨大イベントであり、世界中の国・国際機関・企業・団体・人が参加する。今後の日本の在り方を示すイベントでもあり、企業からは成長の起爆剤として多くの期待が集まっている。そこで大阪・関西万博の準備・運営を行う2025年日本国際博覧会協会(博覧会協会)にこれまでの取り組みや今後の展望を聞いた。

大阪・関西万博を機に社会が変わる 様々なプログラムで参画機会を用意

森 栄子
2025 年日本国際博覧会協会
機運醸成局地域・観光部審議役 兼 観光推進課長

─大阪・関西万博の概要について教えてください

大阪・関西万博は2025年4月13日から10月13日までの184日間、大阪市臨海部の人工島夢洲(ゆめしま)で開催される国家イベントです。テーマとして“いのち輝く未来社会のデザイン”を掲げており、コンセプトは“未来社会の実験場”です。約2,800万人の来場を想定しており、平均すると1日あたり約15万人が国内外から訪れる予定です。経済波及効果は約2兆円と試算されております。

よく国際博覧会と五輪との違いを聞かれますが、五輪が国際オリンピック委員会(IOC)と開催都市の主催による民間イベントであるのに対し、国際博覧会は国際博覧会条約(BIE 条約)に基づいて国が主催する国家イベントです。世界最大の人類の祭典ともうたわれており、その在り方は時代と共に変化してきました。

─日本の万博と言えば1970年の大阪万博が最も有名です

この半世紀で社会は大きく変わってきました。万博も1970年当時は国威発揚型のイベントだったものが、現在は世界共通の社会課題解決をテーマに掲げ未来に向けた取り組みを発信する場となっています。日本の愛知県で開催された2005年日本国際博覧会(愛・地球博)がそのターニングポイントでした。

愛・地球博ではテーマに“自然の叡智”を掲げており、以降、5年に1度の登録博では世界各国が知恵やアイデアを結集させパビリオンという形で発信してきました。万博の会期は半年と長いため、そこでさまざまな交流が生まれるとともに、多種多様なコラボレーションを実現し、次の時代の礎を築いてきたのです。

万博は国家にとって未来を形作る重要な戦略の場であり、これまで開催国の立候補がなかったことはありません。日本においても大阪・関西万博が社会を変えていくきっかけになり、さまざまな面で国の施策を加速させていくことになるでしょう。多くの地域や企業が関わることが次の時代を築いていくためには重要で、博覧会協会ではさまざまなプログラムを用意し広く参画の間口を設けています。

“いのち”をテーマに世界に貢献 社会課題を解決した明るい未来へ

─大阪・関西万博誘致に向けた取り組みはどのようなものでしたか

大阪から国へ「もう一度、日本で万博を開こう」という提案がされたのが始まりです。私は当時から今回の万博に関わっていましたが、まずは万博という巨大な国家プロジェクトを日本で開催する価値が本当にあるのかという議論からスタートしました。

1970年の大阪万博を見ても分かる通り、万博というのは一過性のイベントではなく、社会を変えていく力を持っています。また、2020年に東京五輪という大きな話題があるものの、そこから先に国を動かすような大きなプロジェクトはありませんでした。社会が多くの課題を抱える中、未来に向けて社会の在り方を議論し、社会を大きく変えていく仕掛けが必要であるとして、大阪・関西万博の誘致が決定しました。

─誘致にあたってどのようにテーマを決めましたか

「日本が世界に貢献できるものは何だろう?」と考えた時、真っ先に浮かんできたのが日本は世界に先駆けて高齢化が進んでいる国だということでした。これまで日本は高齢社会を乗り越えるためにさまざまな工夫を凝らし、新たなサービスを生み出し、社会の在り方を変えてきました。日本がこれまで多様な資源や歴史を培ってきたことも相まって、世界からの注目度は高かったと言えます。

そこまで考えた際に万博のテーマとして浮上してきたのが“いのち”でした。先進国のみならず発展途上国の共感も得ることができるテーマです。また、2025年は国連が定める持続可能な開発目標(SDGs)期限である2030年の5年前であり、達成状況を確認しつつ取り組みを加速させ、2030年の後についての議論が始まる年でもありました。そうした中、“いのち”をテーマに掲げ万博にチャレンジすることは大いに意義のあることでした。

─誘致活動は順調に行われましたか

2017年4月に万博への立候補が閣議了解されましたが、愛・地球博と比べ誘致活動の期間が非常に短く、競合であるフランス・パリが有力候補として名が挙がっていました。それでも日本で開催する意義は大きかったため、国、地元自治体、経済界が一致団結しオールジャパン体制で誘致に臨みました。その後、2018年1月にパリが万博誘致を辞退し、同年11月にロシア・エカテリンブルク、アゼルバイジャン・バクーと競った結果、BIE 総会にて日本が2025年万博の開催国に選ばれました。

─日本が選ばれた理由は何だったと思いますか

SDGs への貢献が期待できるテーマや過去の開催実績、日本が国全体で万博を待ち望んでいる姿勢などです。誘致活動の間は本当にいろんな立場の方々から力をお借りし、大阪に決まった瞬間は私も思わず涙がこぼれました。

会場全体で未来都市を形作り 次世代の社会の在り方を提案

─大阪・関西万博の開催が決定した後の動きについて教えてください

大阪・関西万博の開催が決まり、すぐさま準備が進められました。万博の主催は国ですが、国が直接準備を進めることは難しいため、2019年5月に経済産業大臣が特別措置法に基づき万博の準備・運営を行う組織として、今の博覧会協会を指定しました。会長には経団連の会長が就任するとともに、国・自治体・経済界から人が集まり、オール日本の体制で協会を作りました。そこから先はひとつひとつを丁寧に積み上げる、地道な活動の連続でした。博覧会協会では2020年12月に大阪・関西万博の開催に必要な事業方針や基本的な考え方をまとめた「2025年日本国際博覧会基本計画」を策定しました。これは大阪・関西万博のマスタープランと言えるものです。

また、博覧会協会ができた後も、国は大阪・関西万博のためさまざまな施策を行っており、2020年9月には史上初となる国際博覧会担当大臣が任命されました。その他にも、“未来社会の実験場”の具体化に向けたアクションプランの策定などを行っています。大阪・関西万博を契機として、地域活性化やデジタル化の推進などを促進すべく、さまざまな万博への参画機会が設けられていきますので、地域や企業にはぜひこのチャンスをしいと思います。

─大阪・関西万博は日本に何をもたらしますか