進化した「人間洗濯機」が紡ぐ新たな未来とは[サイエンス・青山 恭明 氏]

インタビュー
本記事は2023年8月31日発行の季刊誌『EventBiz』vol.32で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

『EventBiz』vol.32|特集① 大阪・関西万博に向けた社会の動き
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)は「未来社会の実験場」と言われており、新たな技術や製品・サービス、そして価値観が生まれる場でもあります。1970年の大阪万博が今の日本社会の礎となったように、大阪・関西万博は未来の日本を垣間見るまたとないチャンスになることが予想されます。そこで今回は、大阪・関西万博に向けて加速する社会の変化を特集します。

「ミラバス」など未来型の入浴装置を開発するサイエンスは大阪ヘルスケアパビリオンに「ミライ人間洗濯機」を出展すると発表した。1970年の大阪万博で注目を集めたウルトラソニックバス(通称:人間洗濯機)の進化版が2025年に紡ぐ未来はどのようなものだろう。サイエンスの青山恭明会長に話を聞いた。

人間洗濯機を再び進化させ未来に継承するレガシーに

青山 恭明 氏|サイエンス 取締役会長

─「ミライ人間洗濯機」開発の背景についてお聞かせください

人間洗濯機が最初に登場したのは1970年の大阪万博で、三洋電機(現パナソニックホールディングス)がサンヨー館に「ウルトラソニックバス」を展示しました。当時の会長で、三洋創業者である井植歳男さんが「人間も洗うことができないか」と思いついたのが開発のきっかけだと聞いています。その人間洗濯機をデザインしたのは上田マナツさん、技術面を担当したのは山谷英二さんなのですが、実は数年前にお会いする機会に恵まれ、大阪・関西万博に出展するミライ人間洗濯機のアドバイザーとしてご協力いただいています。

1970年の大阪万博は人々が初めて目にするものであふれていました。例えば缶コーヒーであったり、ファーストフードであったり、動く歩道であったり。今では何の変哲もないものもかつては斬新で、当時小学生だった私も目を輝かせたものです。そして、それらのほとんどが社会実装されていきましたが、人間洗濯機だけは実装されなかったと長年言われ続けてきました。

上田さんと山谷さんとの出会い、そして2025年の大阪・関西万博の開催決定。この2つを受け、私は何としてでも人間洗濯機の進化版を出展し、今度こそ未来に継承するレガシーにしたいと強く思いました。それがミライ人間洗濯機を開発したきっかけです。

─サイエンスでは以前から入浴するだけで体が綺麗になる「ミラバス」のような最先端入浴装置を作っていますよね

人間洗濯機が実装されなかったと言いましたが、ミラバスは現代版人間洗濯機と言っても過言ではないと思っています。そもそもミラバスは私の娘が皮膚疾患を持っていたため体をこすって洗えないのを何とかしたいと思っていた際、テレビで見かけたマイクロバブル(超微細気泡)からヒントを得たもので、着想の根幹にはサンヨー館で見た人間洗濯機があります。

ミラバスの初号機ができたのはもう16年も前のことですが、世代交代を繰り返しながら今でも多くの人から愛されています。ミラバスで培ったノウハウをもとに、大阪・関西万博に向け今一度人間洗濯機を進化させ、万博会場で世界中の人々をワッと驚かせたいと思っています。

「ココロもカラダも綺麗に」入浴が健康に直結する未来

─ミライ人間洗濯機のコンセプトや機能はどのようなものでしょう

“ココロもカラダも綺麗にする”というテーマのもと、サイエンスの根幹技術であるファインバブルテクノロジーを駆使して開発しています。カプセルのような形状で、開閉部分はガルウィングドアになっています。センシング機能を搭載しているため入浴するだけで脈動を取り、健康状態やストレス状態を瞬時に判断することが可能です。そして、健康状態に合わせてその人が最もリラックスできる映像をカプセル内360°に映し出すことで副交感神経を高める、といった使い方もできます。

健康データに関しては現在大阪大学 産業科学研究所にサイエンス技術研究所を設け、より多くのサンプルを集めているところです。そうすることでゆくゆくは入浴するだけでAI が自分の健康状態を把握し、改善のための適切なアドバイスをくれる……というところまで漕ぎつけられるのではないでしょうか。

また、センシング部分についても当初は背中をしっかりミライ人間洗濯機に接着させることで脈動を取ろうと考えていましたが、バブルが電波剤のような役割を果たすため、自由な体勢でも大丈夫なのではないかということが分かってきました。完成までまだまだ進化するでしょう。

─開発体制や開発中のエピソードをお聞かせください

2018年の暮れに大阪・関西万博の開催が決まった際、いの一番に社員に「何としても万博に絡むぞ!」と発破をかけました。なぜ「出展するぞ!」と言わなかったのかというと、当時のサイエンスにはそこまでの力がなかったからです。当時の業績は12期連続右肩上がりではあったものの足し算に過ぎず、大阪・関西万博に出展できる企業になるには掛け算にする必要がありました。3年間社員が一致団結し、死に物狂いで努力した結果、2022年7月に大阪ヘルスケアパビリオンのスーパープレミアムパートナーになることができた時は感無量でしたね。

開発体制については上田さんと山谷さんからアドバイスをいただきつつ、サイエンスの開発部門だけでは難しい部分に関してはさまざまな大学と連携して研究を進めています。すでに開発度は90%近く、さらなるブラッシュアップを図りつつ、2023年末には完成予定です。開催1年前くらいから、いつでもどこでも持っていける状態になる見込みです。

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