人々を魅了する“食”のイベント ~イベントの創り手たちの想いとその仕掛け~

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本記事は2016年5月31日発行の季刊誌『EventBiz』vol.3で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

食材や料理、グルメ、人気料理店などは昔からテレビや雑誌で特集として取り上げられることが多く、デパートの催事場では「北海道フェア」や「沖縄物産展」など各地の名産品や料理が目玉として人気を博してきたが、最近はただおいしいものを食べることだけでなく、イベントという非日常の場がより多くのひとを惹きつけるようになってきた。いつでもその土地、その店に行けば食べられる料理が、イベント開催時に一堂に集結することでさまざまな料理を食べ比べすることができ、また有名店同士のコラボなどがさらなる話題を呼び込む。食のイベントは、いまや1日あたり数万~数十万人以上の集客が可能なエンターテインメントとなったのである。

また、オクトーバーフェストや日本酒のイベントなども各地で開催されており、世界各国・日本各地で発達したお酒に焦点を当てたイベントも人気を集めている。旅行の目的のひとつは、多くの人にとってその土地の料理やお酒を楽しむことだが、イベントでもそれぞれの土地で異なる風味を持つ料理やお酒を通してその地域の文化を感じられることが、最大の魅力となっているのであろう。

ご当地グルメやラーメン、カレー、餃子など、子供から大人まで誰にでもなじみ深い日常の“食”や世界各国のグルメをメインとしたイベントを、本特集を通して創る側から、その魅力やイベント成功のカギについて探る。

おいしい料理への探究心

特に「食」に焦点が当たるようになったきっかけのひとつとして、日本がバブル景気にわいた1980年代に起こった、高級料理ブームが挙げられる。多くの人が食に余分なお金をかけられる余裕が出てきて、フランス料理などをはじめとした高級料理が流行し、「高級なもの=おいしいもの」という考えのもとひたすらに高級食材や料理を求めた。その頃に、贅沢なものではなく身近で庶民的な料理を楽しもう、ということから「B級グルメ」という言葉が生まれた。

バブル崩壊後は地域活性につながる地方ならではの食材や郷土料理などの「ご当地グルメ」が注目を集めめるようになる。2000年代には富士宮やきそばに代表される、各地の日常食に地域名を冠した料理も「ご当地グルメ」として認知されるようになり、地域独特の数百円の食文化が旅行の目的になるという現象が起きる。各地域で発達し地元の人々に愛される、おいしくて値段が手頃なさまざまな料理は、その地域外の人々の関心も多く集めたのだ。

人々のおいしい料理への探究心はつきることがない。だが、どんな食材、料理も容易に手に入れることができるようになった今、料理以外の体験や感動も得られるイベントの場が求められているのではないだろうか。

“食”がイベントのメインに

交通の便が発達し、博覧会など大規模なイベントが開催されるようになると、食に関するコーナーが注目されるようになってきた。集客の多いイベントほど食へのニーズは大きくなり、ついには「食」をメインとしたイベントが誕生した。

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