音楽イベントの興隆を辿る

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本記事は2016年8月31日発行の季刊誌『EventBiz』vol.4で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

近年コンサートやフェスをはじめとした音楽イベントがその人気と需要を爆発的に伸ばしており、人気アーティストのチケットなどは即日完売が当たり前で、行きたくても行けない人が続出している。ライブ・エンタテインメントの国内市場規模を調査しているライブ・エンタテインメント調査委員会の報告によると、2009年に4万8,188件だったコンサートの公演回数は2014年には5万4,394件(12.8%増)になっており、動員数も2,476万人から3,570万人(44.2% 増)と大幅に増加している。市場規模に至っては1,543億円から2,721億円(76%増)と急激な成長を遂げており、いかに音楽イベントが人々にとって身近かつ欠かせないものとなったかが見てとれる。これほどまでに人々を惹きつけて止まない音楽イベント。その人気は一体どこから生まれたのだろうか。

オーディオレコードの低迷

音楽イベントが広く世に浸透するようになった最大のきっかけが、CD をはじめとするオーディオレコードの低迷だ。過去10年間の生産実績を見るだけでも、2006年には2億9,764万1,000枚・巻を生産していたのが、2015年には1億6,964万9,000枚・巻と、約43%も減少しているのが分かる(日本レコード協会調べ)。この原因は、インターネットやIT の普及にともない「YouTube」や「ニコニコ動画」など無料で音楽を聴けるサービスが増え、若者のテレビ離れも相まって「音楽を買う」という意識が希薄になってしまったためだ。
これにより、今までオーディオレコードを制作・販売することで生計を立てていた企業やアーティストは必然的に、代わりとなる「商品」の開発を余儀なくされることとなる。

IT 社会における体験型イベントの興隆

そんな折、IT 社会の弊害とも言える慢性的な人と人とのコミュニケーション不足や、そこから生じるリアルさの欠如、ストレス、閉塞感の解消法として、“体験型”のイベントが脚光を浴びることとなる。音楽業界も類にもれず、コンサートやフェスといった体験型イベントに今まで以上に注力しはじめるが、国境や人種、時に思想すら超越し得る可能性を秘めた音楽と体験型イベントとの融和性は非常に高く、同時期に普及したSNS によるネットワークの構築・波及もその一助を担い、瞬く間にコンサートやフェスは人々の“共感”と“体験”の場の代名詞として定着した。

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