近年、国際会議や企業のパーティーなどでベジタリアンやハラール、ヴィーガンなどに配慮したメニューが増えている。その傾向は2020年の東京オリンピック・パラリンピックや2025年の大阪・関西万博などで日本が世界に存在感を示すことでますます顕著になっていくだろう。だが、日本における食の多様性への配慮はまだ十分と呼ぶには程遠い。そこで食の多様性のスペシャリストであるフードダイバーシティの守護彰浩氏に、食の多様性の大切さや日本の現状、これからの対応について話をうかがった。
インバウンドと食の多様性
食の多様性とは文字通り、さまざまな思想や文化を持つ人々が、同じようにおいしい食事を取り、空腹や不自由さを感じることなく快適に過ごせる状態のことだ。昨今は日本においてもその重要性が唱えられており、その背景にはインバウンドの増加がある。
政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」において2030年までに訪日外国人旅行者数6000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円を目標に掲げている。日本政府観光局(JNTO)の発表によると、同局のビジット・ジャパン事業が開始した2013年には521万人だった訪日客数は2018年には3,119万人に増加しており、2030年の目標も決して不可能ではない数字に思える。
「食の多様性には大きく分けて3つの種類があります。宗教や主義による禁忌、アレルギー、そして好き嫌いです」と守護氏は話す。特に宗教による禁忌のあるムスリム(イスラム)教徒は世界で16億人、ベジタリアンは9億人いると言われている。訪日外国人旅行者が増えることで、かつては考慮に入れる必要がなかったこれらの宗教にも、配慮する必要が出てきたのだ。また、さまざまな人種が訪れることで、全部で28品目に分類されるアレルギーへの対応もより厳密なものとなる。
食の多様性への対応
食の多様性と一口に言っても、その実情は多岐にわたる。肉や魚を食べない「ベジタリアン」、イスラムの教えによって豚肉由来の食材やアルコール類が禁じられている「ハラール」、ベジタリアンよりさらに徹底して酪農製品(卵・牛乳・チーズなど)を食べない「ヴィーガン」、小麦アレルギー等に配慮した「グルテンフリー」などなど、数え上げればきりがない。