『EventBiz』vol.24|特集① イベントはテクノロジーで“こう”変わる
いかに驚きや感動を与え、体験価値を向上させるか。イベント主催者の使命達成を支える立場として、技術者たちは日々イベントテクノロジーの開拓に奮励する。特集ではテクノロジーの使い手と作り手にフォーカス。テクノロジーを使ったユニークな発想や体験のほか、それらを実現させた数々の技術を紹介する。
イベントは日々進化し続けている。参加者は常に新鮮な驚きを求めており、その期待に応えるためには最新の機材や技術、そして創意工夫が必要だ。今日におけるイベント演出のトレンドと最新事例について、イベント制作を手掛けるタケナカ/シムディレクトの長崎氏に話を聞いた。
リアルタイム性と没入感 変わりゆくイベント演出
近年のイベント演出の潮流を見ると、「リアルタイム」と「イマーシブ(没入型)」というキーワードが浮かんでくる。リアルタイム演出は特に参加型のイベントで重要になってくる要素であり、参加者の反応を受けてからフィードバックを返すまでのタイムラグを極力短くすることが求められる。一方、イマーシブとは映像や立体音響などを用いて、参加者にあたかも別世界にいるかのような感覚を与えることだ。
新型コロナウイルス以降、それまでのリアルイベントを代替するようなオンラインイベントが急増した。このオンラインイベントこそ、リアルタイム性が重視される最たるものだ。画面越しのイベントの場合、参加者とコミュニケーションを図るためにコメントやアンケート機能が使われることが多いが、コメントやアンケート結果の表示が遅くなるほど参加している感が薄れ、離脱率が上がってしまう。
タケナカでは15年ほど前からリアルタイム演出への取組みを進めてきた。当時はインタラクション(相互作用)という呼び方の方が馴染み深かったが、今では伝説となっているフランス発のインタラクティブ映像システムを国内ではいち早く導入した。人の動きに合わせて映像が動くもので、歩行に合わせて揺らぐ水面のリアルさは見た瞬間に目を奪われるほどだった。ところが、そのインタラクションは想像したほど、国内では普及しなかった。日本人には実績のないものに対し、自らが率先してパイオニアになることを避ける傾向があるように思える。プロジェクションマッピング(PM)も同様だが、一度ヒットすれば爆発的に広まっていくものの、そこにいたるまでのスパンが長い。
コロナ禍はイベント業界に深刻なダメージを与えたと言われているが、一方で技術の推進につながったという側面もある。オンラインイベントの件数が増え、そこで必要とされるリアルタイム演出をはじめとする開発スピードが飛躍的に上昇した。それはリアルイベントに活かせる技術もあり、コロナ禍以前と後ではイベントテクノロジーは劇的に変化すると言ってもいいだろう。