『EventBiz』vol.23|特集② 大阪・関西万博への鼓動
「東京一極集中」と言われてきた日本が変わろうとしている。その中核にあるのが、2025 年に開催される大阪・関西万博だ。“いのち輝く未来社会のデザイン”をテーマに、人類共通の課題解決に向けた最新の技術やソリューションが集う夢洲の地には、世界中から約2,800万人が訪れると言われている。大阪・関西万博によって社会はどのように変わるのか。最新の動向を追う。
日本貿易振興機構(ジェトロ)は2021年3月、2025年日本国際博覧会協会と包括連携協定を結んだ。これまで国外の万博において日本館の運営を行ってきたジェトロ・大阪本部 事業推進課 山本和美氏に、2025年大阪・関西万博に向けた取り組みと展望を聞いた。
日本館の運営を通じて技術や取り組みを発信
─日本貿易振興機構(ジェトロ)にとって、万博とはどのような位置づけでしょう
これまで、1958年にベルギー・ブリュッセルで開催された万博を皮切りに、長年にわたって海外で開催される万博の日本館の運営主体として関わってきました。今年10月からアラブ首長国連邦(UAE)・ドバイで行われる万博も同様です。そういった海外での運営経験をもとに、1970年の大阪万博や2005年の愛・地球博の際には日本国際博覧会協会(博覧会協会)の運営を支援してきました。つまり、ジェトロにとって万博とは設立当初から続く重要な事業であると言えます。
ジェトロは経済産業省下の独立行政法人であり、貿易投資の推進機関です。万博というのは人類が直面するさまざまな課題に対する日本の捉え方、解決に向けたアプローチを世界の方々に紹介する場です。日本館の運営を通じて、課題解決のキーとなる日本の価値観やテクノロジーを世界の方々に深く理解していただき、中東をはじめとする国際社会における日本のプレゼンスの向上、産業の新興、インバウンドの増加なども目指しております。
─日本館から発信される価値観やテクノロジーとはどのようなものでしょう
私は2019年末までドバイ事務所に勤務していて、ドバイ万博日本館の準備に携わっていました。詳細は東京の専門チームにおいて調整中のため申し上げられませんが、ドバイ博における日本館コンセプトは、「アイディアの出会い」です。環境破壊や高齢化社会など、世界共通の課題に対するアプローチとして、日本社会が古来より大切にして育んできた視点が有効であることを、日本館として世界の方々に訴えていきます。それを通じて、世界中からの来館者が考えを持ち寄って未来に向けたアクションを起こしていく場として機能することを目指します。なお、次回の登録博である、2025年大阪・関西万博の紹介コーナーがあり、日本館の来館者によるメッセージを大阪・関西博につなげていくような取り組みも計画中です。ドバイ政府は現在、ワクチン接種を進めるなど、予定通り万博を開催できるように準備を進めています。
共同事業や人材育成など成功に向けた機運醸成を
─ジェトロと博覧会協会が3月に締結した、包括連携協定の概要について教えてください
大きな目的として、ジェトロと博覧会協会が相互連携することで2025年大阪・関西万博の成功に向けた機運醸成をはかるとともに、大阪・関西万博の目的であるSDGs の達成および未来社会-ソサエティ 5.0の実現に貢献することが挙げられます。具体的な協力事項としては、ジェトロと博覧会協会で共同事業を実施したり、それぞれの事業への協力、ジェトロの国内外ネットワークを通じた大阪・関西万博の広報普及活動、人材育成に関する相互協力などを予定しています。
─ジェトロと博覧会協会の共同事業とはどのようなものが考えられますか
協定締結前の3月3日、ジェトロと博覧会協会の共催でオンライン国際シンポジウム「コロナ後の未来社会、EXPO2025への期待、関西の可能性~世界との共創、そして SDGs 達成へ~」を開催しました。シンポジウムでは大阪・関西万博の意義や、SDGs 達成に向けた国内外企業による共創の重要性、イノベーション創出拠点としての関西の魅力を国内外へ発信し、約1,200人の方にご視聴いただきました。今年度もこういった機会を設けることで、大阪・関西万博の意義や共創の重要性を広くPR していきたいと話しています。
また、ジェトロは博覧会協会が推し進める参加型プログラムである TEAM EXPO 2025に共創パートナーとして登録されています。さまざまな共創チャレンジに対してジェトロが実施する各種支援スキームを紹介することで、チャレンジ達成を支援していこうという取り組みです。特に、社会課題解決に資するアイデアを持つ事業者が、ジェトロが接点を持っている国内外のエコシステムと連携することで、ビジネスとしても持続的な成長が可能なモデルへと成長させていく支援ができたらと考えています。
先日、TEAM EXPO 2025のサイトで各事業者の取り組みを拝見したところ、多様なチャレンジがあってユニークな発想にあふれている一方、海外展開という点ではまだまだ伸びしろがあると感じました。ジェトロとしていかに支援し、どう発信していくかがこれからの課題かと考えています。