イベントで「Pepper」を見限るのはまだ早い[生活革命・宮沢 祐光 氏]

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本記事は2018年11月30日発行の季刊誌『EventBiz』vol.13で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

街頭や店舗に佇むPepper。彼らに積極的に話しかける人は、もうあまり見かけない。2014年に初めてソフトバンク社の孫正義社長とともにステージに登場した彼。赤いハートを手渡される姿が印象的で、ロボットの日常生活への普及に一役買ったのではなかろうか。あれから4年、あれだけ世間を賑わせたにもかかわらず、ビジネス版Pepperの契約を取りやめる企業が相次いでいる。おそらくPepperは、人々の大きく膨らみすぎた期待に応えられなかったのだ。しかし、Pepperは決して「何もできない」訳ではない。実は最近、イベント会場で観客もスタッフも驚きの働きぶりを見せているPepperたちがいる。Pepperに知恵と新たな出会いを与える、イベントに特化したPepper拡張システム「なんでも喋るロボ」を作り上げた生活革命に話を聞いた。

Pepper を優秀なイベントスタッフにするために

宮沢 祐光 氏(生活革命)

イベントのロボット活用に関するビジネスは、圧倒的にレンタルが多い。しかし生活革命は、単純なレンタルのみではなく、イベント会場の状況を把握した上でどういった利活用ができるか、Wi-Fiの整備、当日のロボットの運用・保守といった企画制作も含め、包括的な提案を行っている。生活革命のメンバーは、販売元であるソフトバンクロボティクスによるPepperの公式法人向けモデル「Pepper for Biz」の発売以前からPepperのイベント活用に向けて取り組んできた。例えば、学校説明会での生徒へのプレゼンテーションや、Pepperにボクシングをさせるゲームなど、ノウハウを蓄積しながら新しいニーズを探り、独自のイベント向けのオリジナルシステムやソフトウェアとしてサービス化を実現していった。

ちなみにソフトバンクロボティクスが「Pepper for Biz」をリリースしたのは2015年の10月。同時にイベント業界でも、Pepperとアプリを簡易にセットアップして使用者に配送するレンタルビジネスが盛んとなり、展示会での集客やイベント会場での案内など、さまざまな場所にPepperたちは派遣されていったが、実際に現場で彼(彼女)を立たせてみると、あらゆる問題が浮き彫りになった。

Pepperをイベントで使う際に問題となっていたことは、大きくまとめると3つある。まず、レンタルビジネスのみが盛り上がり、イベント現場でのサポートまでをサービスとして提供する企業があまりないことだ。

基本的に多くのレンタルサービスは貸し出しのみで、設置からPepperと接続するWi-Fiのセットアップ、細かい操作やトラブル時の対応まで全てイベント担当者がやらなければならないビジネスモデルであり、当然設置場所や効果的な見せ方といった演出のサポートもない。

2つ目は発音・ジェスチャーがイベント向きではない点だ。Pepperは一対一の会話を想定してコミュニケーション機能が作り上げられているため、雑音の多いイベントでは相手の声をうまく聞き取れず、会話の成立が難しい。加えて、イベントを想定した会話の語彙が少なく、来場者との会話のキャッチボールが不自由で、ぎこちなくなってしまう。

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