これからの展示会に必要なコミュニケーションの考え方[JTBコミュニケーションデザイン × アペルザ]

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本記事は2020年11月30日発行の季刊誌『EventBiz』vol.21で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

『EventBiz』vol.21|特集 2021年イベントトレンド予測
新型コロナウイルスの影響から、2020年の春先から早急な変容を求められたMICE業界。現在も感染防止のケアだけでなく、代替案となるオンラインやハイブリッドといった新様式への対応が進んでいる。さらにデジタル・トランスフォーメーション(DX)やニューノーマル体験、SDGsなど、主催者は日々様変わりする社会情勢に対応した変化が求められる。そこで今回は2021年、イベントを開催するうえで押さえておきたいトレンドを紹介。変化に素早く対応した企業事例や、まだイベント業界に浸透しきれていないものの、今後注目が高まるコンテンツを紹介する。

オープンイノベーション。新しい発想や技術を生み出すため、製品や研究開発などで自社以外の組織による技術を取り込むという考え方だ。三人寄れば文殊の知恵、と言うは易いが、さまざまな要因から実現には至りにくいのが実情だという。10月26日からオンライン展示会「未来のクルマ Technology ONLINE」を連携し開催したJTB コミュニケーションデザイン(JCD)とアペルザは、展示会の開催意義のひとつとして「オープンイノベーションの場の創出」を挙げている。そこで “ オープンイノベーション ” を切り口として、JCD・長谷川裕久氏とアペルザ・下宮慎平氏にこれからの展示会に必要なコミュニケーションの考え方について聞いた。

展示会「未来のクルマTechnology ONLINE」

(左)長谷川 裕久 氏(JTB コミュニケーションデザイン)と 下宮 慎平 氏(アペルザ)

「未来のクルマ Technology ONLINE」は、車の部品・製造に関するものづくり企業を集めたオンライン上の展示会だ。アペルザが開発したプラットフォーム「アペルザクラウド」を使用し、出展者情報の掲載やセミナーの配信を中心に展開した。

アペルザクラウドは元々、製造業企業向けにセールスマーケティングを支援するためのツールで、今回はこのアペルザクラウドのシステムを拡張しオンライン展示会のプラットフォームとしている。出展者の資料のダウンロードや動画の視聴が可能で、リアルタイムでのセミナー配信、その後のアーカイブ化、マッチングサービスなども行った。

アペルザクラウドは通常のオンライン展示会のプラットフォームとは違い、オンライン展示会の専用プラットフォームではなく、展示会で出会った見込み客と出展者のつながりを会期終了後も持続させられるように出展企業向けのサービスとして開発された。具体的には、企業情報の閲覧者や出展者セミナーの聴講者の情報を出展者へフィードバックするシステム、メールマガジンの反響を可視化するシステムなどを備えている。

きっかけのための場づくり

昨今のオンライン展示会の在り方について下宮氏は「点と線のサービスが混在していることに違和感がありました」と話す。下宮氏によれば、コミュニケーションは“点”のコミュニケーションと“線”のコミュニケーションに分かれるという。例えば、展示会での名刺交換や資料のダウンロードなどは、一回のやりとりである程度完結する“点”のコミュニケーションに分類される。一方、出会った企業とチャットをしたり商談を進めたりすることは、行動とそれに対するリアクションが持続する“線”のコミュニケーションだ。

オンライン展示会のプラットフォームは新しい企業との出会いやセミナーでの情報収集など、点を重視しているサービスがほとんどだが、その中に線のコミュニケーションである出展者とのチャット機能が入っているケースがあり、会期が終わったら使えなくなってしまう場合も多く、線のサービスが点で終わってしまうという齟齬が生じている。

JCD とアペルザは、オンライン展示会上のコミュニケーションの特徴と機能のずれをなくすため、出展企業はカンファレンスの配信期間だけでなく、11月末までは全てのサービスを利用することができるよう設計。機能は制限されるが、12月以降も資料やセミナーのアーカイブ化などを行い、継続して見込み顧客と出会える場として運用していく方針だ。オンラインかリアルかに関わらず展示会でオープンイノベーションを創出していくためには、こうしたコミュニケーションに対する戦略が特に重要になる。JCD の長谷川氏は「私たちはコロナ禍以前からオンラインのビジネスマッチングシステムに携わってきましたが、どのシステムも基本的には課題を抱えた企業と、解決策を持っている企業の1対1の構図でした。しかし、私たちが目指しているのは従来の展示会のように出展者とバイヤーだけの関係ではなく、複数と複数、N 対 N の関係を構築することであり、この関係性こそがオープンイノベーションには欠かせません」と話す。つまり、課題を抱えたバイヤー、解決策を持っている出展者だけでなく、その他の出展者やさらにその出展者の知り合いの企業も巻き込んだコミュニティが必要となってくる。現在 JCD とアペルザはこのコミュニティの形成のために「未来のクルマ Technology ONLINE」を含め、展示会の在り方を試行錯誤している段階だ。

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