明快なデザインが必ずしも正解とは限らない[博展・矢野 吉昭 氏]

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本記事は2021年2月28日発行の季刊誌『EventBiz』vol.22で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

『EventBiz』vol.22|特集 2021年、 大注目のブースデザイナー
商談や新規顧客の開拓、パートナー発掘など、展示会にはビジネスを成功させるためのチャンスが無数に転がっている。そのチャンスを確実にモノにするためには、来場者が「見て」「入って」「体験したいと思う」ブースデザインが重要なカギとなる。本特集では、唯一無二の展示会ブースを生み出す選りすぐりの実力派ブースデザイナーに焦点を当て、その価値観やこだわり、アイデアの源泉を探る。

矢野 吉昭(やの・よしあき)
大阪大学大学院地球総合学科建築工学卒業。博展勤務。展示会を中心に多数の空間デザインを手掛ける。IF DESIGN AWARDなどアワード受賞歴多数。日本空間デザイン協会にて日本空間デザイン賞の運営にも携わる。

クライアントの伝えたいことに直結するデザインを

─ブースをデザインする上で意識していることを教えてください

商品の特性や、クライアントの伝えたいメッセージをコンセプト化して空間デザインで表現したいと思っています。ただ、それがクライアントにとってメリットになるとは限りません。展示会では情報発信、宣伝が主な目的となりますので、クライアントはできるだけ自社の製品を全て展示したいという気持ちも強いです。多くの製品にはそれぞれの特性があり、なかなか全ての製品に共通するコンセプトが作りにくい場合もあります。ですので、何かを明快に表現したデザインが必ずしも正解というわけではないと考えています。何よりも重要なのは、クライアントが求める条件に合わせてデザインを提案できるか。当然のことのようですが、その柔軟性を持つことは非常に難しいことだと考えています。

─デザインするときはまず何から始めていますか

CAD ですぐにデザインを描き始めると、絵を描くときのようないい意味でのイレギュラーが発生しません。アイデアを膨らませる時はあえて曖昧なアプローチをとる方が意外な発想が思い浮かんだりしますので、ラフスケッチや様々な参考写真を集めるところから始めます。もちろん最終的には与件に合わせた具体的な機能も求められますので、スケッチなどの曖昧なアプローチと、CADを使った正確なアプローチを交互に繰り返して、最終的なデザインを決めていきます。

─ブースデザインの特徴、商業施設などとの違いを教えてください

商業施設だとほとんどの場合は内部空間のデザインを作っていくことになりますが、ブースの場合、外部・内部ともにデザインしていくので自由度が高い。また展示会は通常の商業施設の建物では成立しないようなデザインも可能ですので、プロダクト的な視点も求められると考えています。そういったデザインを経験できるのはデザイナーにとって、とても貴重な経験になりますし、それが商業施設などをデザインする際に新たな発想にも繋がると考えています。

─これまで手掛けてきたブースで手ごたえを感じたものを教えてください