世界の展示会施設最新動向 イベントとニーズの変化に機敏に対応する施設戦略[日本イベント協会・寺澤 義親]

寄稿
本記事は2021年11月30日発行の季刊誌『EventBiz』vol.25で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

『EventBiz』vol.25|特集① 最新のイベント・MICE会場を知ろう!
大型イベント・展示会・MICE・コンサートの開催に欠かせない会場。イベントが開催されるたびに多くの人々が集い、交流する場となる。地域を流動させることから、施設は大きな経済効果を生む起点として、世界中の国々で次々に誕生している。特集では、国内外の施設にフォーカスし「コロナ後の展望を拡げたい、新戦略を見つけたい」という将来に向けた声が聞こえ始めた今、新たな催事をプランニングするために必要不可欠な“場”の最新情報をお届けする。

コロナが発生してからは世界中の会場からリアルイベントが消えた。施設は1年以上もリアルイベントが開催されないという未曽有の打撃に直面した。その間施設は国、地元政府のガイドラインに従い関係機関とも協議連携して感染防止対策の準備実施を進めイベント再開に備えた。またコロナ感染者数の増加に伴い世界各地で施設は臨時病院やワクチン接種会場に転用されることにもなった。世界の情勢はデルタ変異株に大きな影響も受けたが、ワクチン接種が進み感染者増加が抑えられるようになり今年の9月から10月前後には世界各地で制限付きで B2B のリアルイベントが再開されるようになっている。ただし、海外旅行の制限が継続されているため、イベントは国内市場中心で規模も限定的だ。業界がコロナ前の水準に戻るのに2年前後はかかると指摘されている。こうした状況の中で一部の施設はコロナ発生前からも新たな施設戦略を実施しており、コロナ打撃を超えてウィズ・ポストコロナ戦略を展開している。そのポイントはコロナで失った損失を取り戻し、他都市との競争に負けないために、さらに変化するイベントやニーズにも対応してさらなる発展を目指すとしている。こうした施設の最新動向について最初に近年欧米の施設に顕著な施設戦略とコンセプトのトレンドを見て、次に個別の施設動向を紹介する。

日本イベント協会 理事 イベント総合研究所主席研究員 寺澤 義親

[Contents]

  1. 米国(The United States of America)
    1. ジャービッツコンベンションセンター Jarvits Convention Center /ニューヨーク
    2. オレンジカウンティ・コンベンションセンター Orange County Convention Center /オーランド
    3. ラスベガスコンベンションセンター Las Vegas Convention Center /ラスベガス
    4. ジョージア・ワールドコングレスセンター Georgia World Congress Center /アトランタ
    5. マイアミビーチ・コンベンションセンター Miami Beach Convention Center /マイアミ
    6. ワシントンステーツコンベンションセンター Washington State Convention Center /シアトル
    7. インディアナポリスコンベンションセンター Indianapolis Convention Center /インディアナポリス
  2. タイ(Kingdom of Thailand)
    1. クイーン・シリキット・ナショナルコンベンションセンター Queen Sirikit National Convention Center /バンコク
  3. 中 国 (People’s Republic of China)
    1. 深圳国際会展中心 Shenzhen World Exhibition&Convention Center /深圳
  4. ドイツ(Bundesrepublik Deutschland)
    1. メッセ・デュッセルドルフ Messe Dusseldorf/ドイツ
    2. ニュルンベルグメッセ Nurnberg Messe/ドイツ
    3. ケルンメッセ Koelnmesse/ドイツ
    4. メッセフランクフルト Messe Frankfurt/ドイツ
    5. ドイツメッセ Deutsche Messe/ドイツ
  5. 英国(The United Kingdom)
    1. Excel London エクセルロンドン/英国

施設戦略とコンセプト
アジアでは、特に中国では大規模施設の開設が続いているが、展示会先進国の欧米では規模拡大ではなく施設投資の対象が利用者への便利さ、新たなニーズにも対応できる柔軟性、環境や持続性への対応、地元都市ブランドへの貢献、さらにデジタル環境等に向けられている。さらにコロナ発生後は感染症防止の取組み強化を含めて施設利用者の健康と安全を確保する、安心して施設を利用してもらうことも含めて施設のインフラ・設備と運営ノウハウの質向上を優先する戦略に変わっている。具体的な取り組み実例は以下の通り。

1)柔軟性や便利さを重視する
〇規模の異なる各種イベント開催にも対応できる、または展示会、会議、ライブイベントが同時進行するイベント需要にも対応できるようにフレクシビリティのあるイベントスペースを増やす。
〇増えるコンベンション・ミーティングに対応して大中小規模の会議スペースを増やす。
〇ブレークアウトスペース、プリファンクションスペース、控室を増やす。
〇大きなボールルームを増やすと同時にケータリングサービスを拡充する。
〇ロビーやファンクションエリアを見直してロビーをリデザイン・建て直しする。新たにロビーエリア、ホワイエスペースの利用価値を増やす。例えばロビーやプリファンクションスペースには明るい自然光が降り注ぐデザインにする。屋上にガラス張りのアトリウムを建設してそこでパーティやカクテルレセプションを開催できるようにする。
〇静かに小人数で商談や食事ができるスペース増加やスポットのミーティングを開催できるようにパブリックスペースのリデザイン。

2)持続性(Sustainability)に地元コミューニテイとの関係性を重視する
〇建物のデザインや構造については地元都市のブランドやユニークさにつながるものを重視する。そのために周囲環境とも調和する独特な建築デザインによる建物、さらにパブリックアートも配置する。
〇建物屋上にソーラーパネル、グリーン植栽、野菜ファーム、鳥やミツバチの巣箱を設置する。
〇会場内のレストランで地元食材や有機食材によるメニューを提供する。
〇エネルギー効率など環境対応や感染症対応で評価の高い基準認証を取得する。例えば Green Building Council の LEED(Leadership in Energy&Environmental Design)、GBAC Star 等の認証を取得する。

その他では引き続き空港、交通機関、ホテル、レストランやアメニティ施設とのアクセス、会場内で人がスムーズに移動できるホール配置とアクセス手段、会場内での物流・搬出入設備、Wi-Fi 環境、デジタル情報サービス等は重要とされている。コロナ後のハイブリッドイベントへの対応として会場内にデジタル・スタジオを新たに設置する施設も出ている。

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