『EventBiz』vol.27|特集① イベントの未来とは
人と人とが交流する機運が高まりつつあり、大型イベントにも明るい兆しが見え始めている。多くのイベントたちは、開催形態を変化させながら新しい時代の荒波を生き抜いてきた。“イベント”は将来、それぞれどのような形式を選び取り、どのような進化を遂げてゆくのだろうか。人々に求められるこれからのイベントの在り方と未来像を、各イベントの展望から探る。
新型コロナウイルスの影響により2年連続で中止となっていた福岡マラソンが、「福岡マラソン2022」として11月13日に開催されることが明らかになった。福岡の美しい自然を楽しみながら、ランナーが沿道、ボランティア、協賛企業との絆を育む福岡マラソン。3年ぶりの開催にかける思いを、実行委員会事務局の的野直勝氏、松尾賢一氏の両名に聞いた。
豊かな自然と途切れぬ応援 福岡の魅力を存分に堪能できる
─福岡マラソンの特徴と魅力について教えてください
ランナーは福岡市の中心地である渡辺通り天神交差点付近をスタートした後、福岡タワーを望みながら博多湾の湾岸沿いへと入り、美しい海や山へと景観が移り変わるのを楽しみながらゴール地点である県の西部に位置する糸島市を目指します。折り返しが少ないワンウェイコースであり、福岡の名所を通りながら走ることができるため、ランナーからは最初から最後まで飽きることがないマラソンとして好評をいただいています。
大きな魅力の1つが、福岡マラソンならではの惜しみない応援です。福岡の気質である親しみやすさやお祭り好きが高じて、沿道には毎年約25万人の応援が駆け付け、終始ランナーへの温かい声援が途切れることはありません。海上のヨットからも惜しみない応援が聞こえてきます。2019年の開催時には「42の応援メッセージ # あなたの言葉が追い風になる」という企画も実施しました。マラソンコース1km ごとに42のオリジナルパネルを設置し、募集した応援メッセージを掲載するという内容で、ランナーにとってこの上ない励みになったかと思います。
また、制限時間は7時間、完走率96.4%という初心者に優しいマラソンであることや、給食で福岡の美味しい食を存分に楽しめることも人気の秘訣でしょう。福岡マラソンには福岡の魅力がギュッと詰まっています。
─福岡マラソンは全国でも非常に人気のマラソンとして知られています
毎年定員の3倍を超える応募があるため、抽選が厳しくなってしまっているのが悩みどころです。定員を増やしたい思いもあるのですが、市民への影響なども考慮すると簡単にはいかないのが実際です。
─海外のファンも多いと聞きます
福岡はアジアに対して開かれた都市であり、福岡マラソンにも大勢の海外ランナーが参加します。そのため海外ランナーに対し300の専用枠を設けていますが、募集開始と同時に埋まるほどの人気っぷりです。残念ながら2022年はコロナ対策として参加条件を国内居住者のみとしておりますが、コロナが落ち着いた暁にはたくさんの国の人々に福岡を堪能していただけるよう準備を進めていきます。
人とのつながりの中で育まれ交流機会のきっかけを担う存在
─2020年、2021年はコロナの影響で残念ながら開催することができませんでした。ファンの反応はどのようなものでしたか
2020年に中止を決めたのは非常に早い時期でした。4月には初めての緊急事態宣言が発令されたため、中止に対しても「残念だけどしかたない」というご理解の声をいただきました。2021年は2年連続での中止を何とか回避したい思いと、小規模のマラソンであればすでに開催されていたこともあり、4月からランナーの募集を開始しました。ところがゴールデンウィークを境に感染者数が増えたことから状況が変わり、再度検討を重ね、6月には苦渋の思いで中止を発表することになりました。すでに多くのランナーがエントリーを終えて練習を開始していたため、その落胆っぷりは前年以上だったと記憶しています。