イベントを仕事にするとは?[テルミック・高田 裕之 氏]

インタビューイベント職業図鑑
本記事は2022年11月30日発行の季刊誌『EventBiz』vol.29で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

『EventBiz』vol.29|特集 イベント業界で働く 2023
イベントのV字回復が期待される中、多くの企業の頭を悩ませているのが人手不足の問題です。働き方や働き手の考え方が大きく変わりはじめた今、優秀な人材をイベント会社・業界に確保するためにとるべきアクションを考えます。

この仕事をはじめたきっかけ

大学時代にとあるアーティストのコンサートに行き、そのコンサートが盛り上がりっている場に感動し、イベントの空間作りに携わりたいと強く思い、この業界に足を踏み入れることを決めました。

仕事内容

テルミックはテレビのセットの制作を皮切りに事業をスタートしました。今ではコンサートや展示会などさまざまなイベントを演出する舞台装置や LED ディスプレイ、映像制作のプランの提案や製品開発、製造、設営、オペレーション、保守管理などを総合的に⼿掛けています。僕はテルミックの「TELMIC Néo」というプロジェクトでリーダーを務めていますが、この「TELMIC Néo」では、イベントの最先端の演出技術を使って、商業施設やオフィスなどに向け、日常空間をエンターテインメントで非日常に変えていくことをコンセプトとして事業を展開しています。僕自身は入社直後にコンサートの現場の仕事を4年経験し、その後はテレビ番組やイベント演出の製品をメインに、他にも電飾や LED ビジョンといった製品を開発してきました。

イベントの現場は大好きではありましたが、僕は根っからの技術屋気質。当時からものづくりに大きな興味があり、徐々に「自分の作った製品がイベントで使われたら嬉しい、作ってみたい」という気持ちが湧いてきました。当時テルミックでは LED 製品の開発製造を行っていませんでしたが、新しく製品開発の事業を立ち上げました。代表的な開発製品は「WinVision」という LED ビジョンのシリーズです。ほかにも電飾製品やメカ製品「Pilot System」といった演出装置など幅広い製品に携わってきました。

さらに自分が開発したものをエンターテインメントという市場で使ってもらうためには、企画やマーケティング、デザインも含めて自分たちで行う必要があり、新たなメンバーを取り込んだことで今の「TELMIC Néo」ができあがりました。今ではこうした開発やマーケティングに加えて、各部署の統括や海外視察による市場調査、クライアントとの打ち合わせなどセクションを跨いで毎日あらゆる分野の仕事に携わっています。

今の仕事で好きなこと、大変なこと

現場で走り回っていた時代は、電飾でもステージの装置でも、自分のボタン操作ひとつでさまざまな演出が実行され、それにイベントの参加者が思わず歓声を上げる様を目の当たりにしたとき、喜びを感じたことを覚えています。実はこの仕事に携わってから、あまり「大変だ」「苦労した」と感じたことはありません。毎日どんな仕事も楽しく、特にやる気が湧くのは、難しい仕事を引き受けたときやトラブルが起きたときでしょうか。もちろんトラブルそのものが好きな訳ではなく、そのトラブルや無理難題のようなニーズを、どのように解決していくかを考えることにやりがいを感じます。それらを解決することが僕たちのやるべきことで、その壁を越えることこそが、参加した人たちが心からイベントを楽しんでくれることにつながっていると思います。

エンターテインメント業界は良いものに対してユーザーがお金を払い、またそのお金で作り⼿がより良い体験を作っていくというサイクルがしっかりと成立しています。しかし、ユーザーはつまらないと思った瞬間にお金を払わなくなり、コンテンツを作るための資金の流れが途絶え、どんどんエンターテインメントの質が落ちるといった悪循環に変わってしまいます。これらを防ぐためにも、僕たちのようにエンターテインメントを技術の分野から支える企業が必要で、イベントの参加者のために面白い演出や感動できる体験について日々研究と努力を重ねています。

これからイベント業界に飛び込む人へ

テルミックでは現在、従来の LED 電飾や映像装置に加え、インタラクティブ製品や XR 関係の開発を進めています。エンターテインメントは時代の流れによって需要が大きく変化します。そのため、イベント業界は日々新しい分野に飛び込むことを求められることから、新しいことにチャレンジできる場所です。また、ターゲット層に若い世代がいることから常に新しい情報が入ってくるため、長く若い心を保てることも特徴です。エンターテインメントは絶対なくならないし、なくてはならないものだと思っています。そして、この業界のいいところは「誰かを楽しませたい」という強い気持ちさえあれば、どんなことも実現できてしまうところ。自分も楽しみながら人を楽しませることを考えられる、あるいは考えることが好きな人に向いている業界だと思います。こうした考えを持っている人々と、新しくより良いエンターテインメントを作っていきたいですね。

Profile
テルミック Néo プロジェクトリーダー
技術開発部 兼 事業開発部 部長
高田 裕之 (たかだ・ひろゆき) さん

タイトルとURLをコピーしました