イベントの食ブースというと、お祭りの屋台や軽ワゴンに簡単な調理スペースをつけた移動販売車、運動会などでよく目にする白いテントがずらりと並び、何かの目的でそこに集まった人々に食事や飲み物を提供する、というのがそもそものはじまりではないだろうか。人が集まる場所に、簡易的な設備を持ってきて飲食の販売を行なうのは、今も昔も変わらないが、そのスタイルはより効率的で安全に、よりスタイリッシュな形態へ、提供する料理だけでなく、外観の見た目も美しくきれいになってきているのである。かつてはメインイベントのおまけのような存在であった食ブースは、いまや食そのものだけでイベントを成功させてしまう力を持つようになった。
最近はラーメンやおでんの屋台はめったに目にすることがなくなったが、かわりに色とりどりのキッチンカーが街中で見られるようになった。イベント会場においては、東京都ではテントブースは物販が多く、食のブースでは本格的な料理の提供が増えたことなどから、店舗さながらのユニットハウスが目立つようになってきた。
その背景のひとつには、食品衛生法や消防法、道路法などの規制が挙げられる。都道府県や地方自治体によって細かい条件は異なるものの、イベント毎に保健所や消防局の許可申請を受けなければならない。非営利よりも営利目的の商業イベントの場合の方が審査項目が厳しく、テントの場合は露店営業、キッチンカーの場合は移動販売営業、ユニットハウスの場合は固定店舗営業となり、それぞれの地域の条例によっても出店の方法は変わってくる。
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出店のカタチの変化
テント、ユニットハウス、キッチンカーとさまざまな形態の出店の方法があるが、基本的にはテントを建て、水道やガスを設置したブースが一般的である。コストが一番安く、設置しやすいのがメリットだが、提供できる料理が限定されたり、許可の下りない場所もあるため、本格的なグルメイベントなどでは少なくなってきているようだ。ただ、休憩スペースや物販のブースはテントが主流で、そのテントの形や色はさまざまなものに進化している。北海道のイベントスペースのトータル企画や施工を行なうプランニング・ホッコーは、毎年秋に開催される「さっぽろオータムフェスト」において、来場者がただ飲食を楽しむだけではなく、イベントの雰囲気自体を楽しんでほしいとの想いから2009年より黒やレンガ色のとんがり屋根のテントを、多く製作し導入した。シックな雰囲気作りが、より多くの来場者を集め、イベントを成長させてきたのである。
一般店舗のような造りこみが可能なユニットハウス
テントに代わって近年増加しているのが、ユニットハウスである。特徴としては構造上は建築物となるため換気扇や、シンク・手洗いなどの水回りなど一般の店舗と同じ条件となり、規定通りに設置すれば許可申請が通りやすく、保健所や消防対策として選択されるケースが多い。また、提供できる料理の幅が広がり、テントと違い風で倒れることもなく、エアコンも設置できるため特に夏場は労働環境改善や食中毒などのリスク回避も可能だ。
ユニットハウスの製造・レンタルで業界シェアトップクラスの三協フロンテアでは、工場内で建築工程の約80%を製作したユニットハウスをトラックで運搬し、クレーンで吊上げ設置するためすばやい施工や解体を実現した。またユニットをいくつもつなげて設置したり、全面ガラス張りなどカスタマイズすることができ、差別化したブース作りが可能だ。全国に支店を持つため国内どこへでも設置に対応し、燃えにくい素材を使用したユニットハウスをそろえるなど、増え続ける食イベントへのニーズに応えていく。
また、食イベント出店に特化したユニットハウス「ユニット売店ハウス」を製造・レンタルするのは、冷蔵庫・冷凍庫・厨房機器のレンタルを行なうコスモ企画だ。昨年、第45回食品産業技術功労賞を受賞したこの「ユニット売店ハウス」は、厨房機器レンタルという同社の特徴を活かし、今までの実績や実際に使用している現場のニーズを反映させて3年前に実用化した。飲食の販売に必要な冷蔵庫や厨房機器などがすでに設置されているパッケージ化されたユニットハウスで、滑り止めの床素材、耐火ボードを使用した壁面、排水管は床下にあらかじめ6つ設置してあるなど、重要な安全基準がクリアされている。もともとラーメン出店の際への厨房機器レンタルを多く手掛けていることから、特にラーメンの提供に最適な造りとなっているが、さまざまな料理の出店で引き合いが多いという。