『EventBiz』vol.30|特集② 展示会のプロに聞く! 出展成功のカギ
集客や接客、展示手法、予算、社内体制・教育、計画の立て方、効果測定、展示会の選定、海外出展成功のコツ……など、さまざまな悩みを持つ出展者に向け、展示会のプロに出展のヒントを聞きました。
展示会ブースデザインを手掛けるかたわら、出展セミナーも定期的に開催している SUPER PENGUIN の竹村尚久氏に展示会ブースにおける「商品陳列」と「説明パネル」、「壁面グラフィック」の効果的な手法について聞いた。
Profile
SUPER PENGUIN 代表取締役
竹村 尚久 氏
[Contents]
よくある3つの悩みとその解法
─出展商品の見せ方について悩む出展者は多いです
展示会ブースにおける商品陳列は、店舗でいう VMD(ビジュアルマーチャンダイジング)の考え方とは少し異なるため、出展者には深く考えすぎなくても大丈夫だと話しています。陳列をきれいに見せるためのポイントはいくつかあり、例えば「キャプション」を設置することを推奨しています。キャプションとは商品のそばに設置する簡単な説明文のことです。
また高価な商品を扱う場合は商品同士の距離を開け、余白を取ることで高級感が生まれます。さらに背景をつくることで、きれいに陳列することができます。基本的にはこれだけで十分なのです。
─展示会では壁面に A 1サイズのパネルを設置するブースをよく見かけますが、より効果的な使い方を教えてください
展示会ではありがちですが、パネルを作り込み、掲げることが目的になっているブースが多いです。A 1サイズのパネルに大量の情報を詰め込んでいる。それは来場者目線といえるでしょうか。
現実的には、読まれる時間は10~20秒。もしパネルの前に1分以上立っている来場者がいたら、出展者は間違いなく声をかけるでしょう。そう考えると読むのに30秒以上かかるパネルは読まれないものだという事実を受け入れる必要があります。
また、チラシをそのまま拡大したデザインのパネルを設置するケースも多いと思いますが、チラシのグラフィック(二次元)とパネルのグラフィック(三次元)ではデザインの仕方が違います。チラシの場合は手に取って見るものなので、目とグラフィック間の距離は一定です。しかし空間におけるパネルの場合、まず来場者にパネルへ近付いてもらわなければならない。つまりブース外の通路からでも何について書かれているのかが分からなければなりません。
そのようなときは、例えば A 1パネルの周囲の壁面にキャッチコピーを大きく書き出すという手法があります。肝心なのは伝えること。であれば壁面パネルだけにこだわることはありません。おすすめは、A 1パネルは30秒以内で読むことができる内容にとどめ、もう少し詳しい内容をスタッフが説明するために、手持ちパネルを作るのです。意外かもしれませんが、手持ちパネルを使うと来場者は話を聞いてくれます。さらに詳細な情報についてはチラシを配布する。これは会社のプリンターで印刷したもので構いません。
壁面パネル、手持ちパネル、配布チラシは接客面で高い効果をもたらしますが、この3点セットを採用することで自然とブース壁面のデザインはシンプルになり、ブース全体のデザインも良くなる。実は一石二鳥のアイデアなのです。
─壁面グラフィックの考え方を教えてください
壁面グラフィックには3つの役割があると考えていて、状況に応じて使い分けるようにしています。①読ませるグラフィック、②出展者用のグラフィック、③印象付けるためのグラフィックの3つです。
①は先述した壁面パネルと考え方は近いです。端的に伝えることが目的です。そして②は来場者に説明するための補助資料的な役割。出展者自身が必要だと思う写真は予め貼っておき、説明で使うキーワードは書いておく。すなわち壁面を自分たちのプレゼンの場にするという考え方です。そして最後の③は、見た目の印象のことです。出展企業としての信頼感や「らしさ」を効果的に見せるために、見た目を整えることも重要です。そこに機能的な意味がなくとも。私は自信を持って「このグラフィックに機能的な意味はなく、ただのデザインです」と言い切っています。
成果をともなう出展のために
─デザインを人に説明し、理解してもらう上でのコツは何でしょうか
デザインなんて意味があるの?という出展者からの声は当然あります。そのようなときは、デザインをアーティスティックなものだと思わないでほしい。展示会ブースにおけるデザインというのは企業の第一印象であり、人の身だしなみと同じなんですと伝えています。売上や成果を出すために必要なことであるとも。
私は展示会デザイナーであると自己紹介しますが、普段から「ブースデザイナー」と「展示会デザイナー」は似て非なるものだと考えています。