“素人vsプロ”ブースからデザイン理論を解剖する[みやぎ産業交流センター・第 14 回 夢メッセみやぎ講演会]

インタビュー

イベント開催前のタイミングは、企画の可能性を探求し、創造的なアイデアを生みやすい絶好の機会である。そこで今回は夢メッセみやぎ・阿部清香氏に講演会を企画する背景と開催に込めた思いを聞いた。(※編集部註:本記事で取り上げる「第 14 回 夢メッセみやぎ講演会」は2024年3月21日に開催された。本記事は開催前に公開したもの)

本記事は季刊誌『EventBiz』で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

再評価されるリアルと直面する悩み

今や、リアルで開催される展示会の価値は再評価されています。オンラインやハイブリッド開催が可能になったとはいえ、それでも対面イベントが依然として多く開催されるのは、リアルならではの五感を刺激する体験や偶然の出会いが生み出す新たな縁に、特別な価値があるからだといえるでしょう。

その特性から、オンラインでの展示会はプル型、対面での展示会はプッシュ型のアプローチが効果的に作用する傾向があります。オンラインでは、物理的な空間に身を置くわけではないため、プッシュ型のアプローチが「侵入」のように捉えられがちです。一方で、リアルな展示会では、来場者自身が積極的に空間に踏み入れるため、偶然の出会いも自然と受け入れられやすくなります。短い会話からでもコミュニケーションが生まれやすい環境です。

また、オンラインでもリアルでも、来場者は何らかの目的を持って参加します。明確な目的を持つ人もいれば、漠然としたヒントやアイデアを求めている人もいます。展示会は、そうした多様な目的で来場する全ての人にとって、効率的な出会いの場を提供します。

我々も展示会に出展することがあるため気持ちがわかるのですが、出展を担当される方は、どのように展示・装飾すれば良いのかという点で頭を悩ませがちだと思います。従来の方法を踏襲したり、経験が乏しいまま設営会社と相談し、提案された装飾で出展しても、期待した成果が得られないこともあります。

今回のねらいは、来場者の感情を論理的に分析し、それを展示ブースの設計にどのように活かすべきかを考えることです。ブース設計における効果的なアプローチを学べる内容となっています。来場者の心を動かす展示空間のつくり方について、実際にブースを立てて比較分析を交えながら解説します。

課題解決に向けた実践型アプローチ

具体的には、ブースデザインの素人である私がデザインしたブースと空間デザインのプロである講師のブースの違いを参加者に体感していただきます。設営された2つのブースを見比べながら解説することで、参加者それぞれの出展戦略へ活かせるのではないかと考えました。プロの技術を尽くしてつくり上げたブースであっても、単に完成形を見ただけでは、ブースデザインのポイントや視覚的効果を十分に理解できないのではないのでしょうか。2つのブースデザインの差分、つまり頭を悩ませる出展者が知りたいと思う「一歩先の何か」を明らかにすることが、私たちの目指すゴールです。

私のブースは、参加者に「このブースには何が不足しているのだろう?」と思ってもらえるくらいに、工夫を凝らしたブースづくりを目指します。全力を尽くします。一方、講師は前回講演していただき好評だった方に今回も依頼しました。参加者からは「内容が興味深く、2時間があっという間に感じました」「無料で学べる機会を提供してくれて感謝しています」「内容が理解しやすく、実践的だった」といった声をいただきました。また、一方で「告知があればもっと多くの人が参加したかもしれない」というフィードバックもあったので、今回は有意義な講演会を開催しながらも、関心を持つ方にしっかりと情報を届けることを念頭に準備しています。

最高の展示会ブース構築法を惜しみなく共有していただきたいと考えています。さらに出展成功するブースデザインにおいては、アーティスティックなセンスではなく、理論や技術が重要な役割を果たしていることもお話しいただければと思います。理論や技術は、一度理解すれば実践できる可能性が格段に高まります。また、来場者の感情に基づいた空間設計についても深掘りしていただきたいです。

来場者の心理を理解し工夫を重ねる

毎年夏に、夢メッセみやぎの7,500㎡の展示場を使用し「全国やきものフェア in みやぎ」を主催しています。このイベントでは、全国から集まった窯元や作家たちが、自らの作品を展示販売し、多くの一般消費者が来場します。今年で12回目を迎えますが、経験を通して学んだことの一つは、成功する出展者は、売上げを伸ばす要因を外部ではなく、自身の工夫に求め、その結果として年々、さらに多くの来場者を集めていることです。この差は作品そのものだけでなく、展示や装飾の方法にも表れていると感じるのです。

出展者が多く集まる場だからこそ、他の出展者がどのように集客しているかを観察できます。実際に他社ブースまで行ってコミュニケーションを交わし、自社ブースや展示製品の改善につなげたという出展者もいます。話を聞いてみると「DM を丁寧に発送し、SNS での情報発信も積極的に行う」や「作品をただ多く並べるのではなく、使用シーンを想像させるような展示方法を取り入れる」といった細かい工夫が、売上に大きく影響しているのだそうです。

たとえるなら「こだわり店主のラーメン店」でしょうか。自身のこだわりを押し付けすぎることで、客側に緊張感や恐怖感を与えるケースがあると思います。大多数を相手にする出展においては、一方的なこだわりや感情ではなく、来場者の感情や反応に配慮した展示を心がけることが重要だと感じています。

今回の講演会は、出展担当者や設営会社だけでなく、実際に空間に「人」を迎えるビジネスを展開するすべての方々に共感いただける内容です。提供する「モノ」や「コト」を通じて、お客様が理想とする体験や状況を想像させるためのヒントを届けたいです。

おかげさまで、夢メッセみやぎは東北地方における大規模イベント開催施設として広く認知されていますが、多くの方々にはまだ、中小規模のイベントにも対応可能な会場であることまでは十分に知られていないのが現状です。この機会に講演会などの形で当施設を実際にご利用いただき、その多様性と機能性を再認識していただきたいです。

一般的には「事業を始めるならスモールサイズから」と聞きます。今回の講演会を通じて、展示会の出展や開催に関しても、ご自身のビジネスを「この規模の空間で展開するなら?」を具体的にイメージしていただけるようなイベントになることを目指しています。


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