2025年日本国際博覧会協会は2024年4月13日、東京で「大阪・関西万博 開幕1年前イベント~ぜんぶのいのちと、ワクワクする未来へ。~」を開催した。開催機運の醸成を目的に開催されたこのイベントの模様をレポートする。
主賓挨拶
2025年日本国際博覧会協会 会長 十倉 雅和 氏
本日4月13日で大阪・関西万博までちょうど1年となり、これからいよいよ集大成の1年となる。既に会場では大屋根リングの木造部分がおよそ8割立ち上がるなど建築工事が着実に進んでいる。1年後の今日、大阪・夢洲の会場に世界中の人々が集まり、ワクワクする未来に向けて歩みを始めるその姿を思い浮かべながら、日本で20年ぶり大阪で55年ぶりとなる大阪・関西万博を素晴らしいものに仕上げたい。
主催挨拶(ビデオメッセージ)
内閣総理大臣 岸田 文雄 氏
大阪・関西万博の開幕まで後1年。日本に再び万博がやってくる。“いのち輝く未来社会のデザイン”のテーマは根源的な問いを私たちに投げかけている。分断と対立で先行きが不透明になっている時代に、地球上のすべてのいのちを輝かせるため、私たちに何ができるか。今、求められているのは世界の未来の可能性に想像力の翼を広げ、行動を起こしていくことだ。万博という一大イベントがそのきっかけになることを期待している。
会場には未来社会の姿が現れる。会場を訪れる日本全国、世界各国からの来場者、特に明日を担う子供たちにとって未来の空気を吸い込むかけがえのない体験となるだろう。開幕まで1年、自治体も経済界も政府も、関係者が一丸となりオールジャパンで準備を進め、未来を切り拓く万博を共に作り上げ、必ずや成功に導いていこうではないか。
1年後、皆さんと共に大阪でワクワクする体験ができることを楽しみにしている。
来賓挨拶
経済産業大臣 齋藤 健 氏
本日でいよいよ大阪・関西万博まで残り1年となり、大きな節目を迎えた。既に140を超える海外の公式参加者によるナショナルデーやスペシャルデーの式典や、文化イベントの実施が内定し、各省庁や全国の自治体による魅力ある祭典の数々も発表され、開催が近づいてきたことを実感している。
大阪・関西万博は“いのち輝く未来社会のデザイン”がテーマだ。ポストコロナの新たな世界や我が国のイノベーションの可能性を実感できる、未来社会の実験場だ。日本が再び成長し、産業が競争力を高めていくために万博をきっかけとしたイノベーションを強力に推し進めていくことは、求められている重要な役割の一つだと考えている。その中でも8人のプロデューサーによるテーマ事業は、いのちを通じて我が国の未来を示す目玉プロジェクトとして大いに期待している。
未来がもう間近に来ていることを実感いただき、世界中から来訪するさまざまな人たちが刺激を与え合い、いのち輝く未来社会に向けて挑戦する気持ちを感じていただきたい。この万博は皆さんが未来に向けて参加・体験・行動するきっかけになると確信している。
会場の建設工事についても着々と進んでいる。シンボルである大屋根リングは木造部分がおよそ8割立ち上がり、海外のパビリオンについても多くの国で発表会や起工式が相次いで行われ、順次建設が着工している。開幕まで残り1年、万博に行けばどのようなものが見られるのか、どのような体験ができるのか、そういった意義や中身を一丸となって発信していく。
国際博覧会担当大臣 自見 はなこ 氏
大阪・関西万博はいのちをテーマにした万博だ。テーマを決めたのは2016年、まだ新型コロナウイルス感染症が世界に蔓延する前だったが、コロナ禍を超えて初めて開催される万博としてこれほど相応しいものはない。8人のプロデューサーや、160の国や民間パビリオン、それぞれが趣向を凝らした展示や祭典をなどさまざまな企画を計画してくれている。私自身、着任以来それぞれのプロデューサーと話をさせていただく中で、実現したい、具体化したい理念や、あるいはパビリオンそのものが持つ外観や展示の魅力に触れさせていただき、いつも大変ワクワクしている。
大屋根リングの上に立っていただくと、中央には静けさの森と湖、そして大きな輪の中には参加国のパビリオンが見え、海の方に目を向けると西には明石海峡、南には紀淡海峡が臨め、まるで空と海とが溶け合っているような風景が広がっている。まるで地球儀を上から見ているかのようだ。この万博を、さまざまな絆を今一度確認し合い、次の時代の扉をしっかりと開くようなものにしなければならない。
また、大阪・関西万博の正式名称は2025年日本国際博覧会であり、日本全体のナショナルプロジェクトで、海外からの350万人を含む2820万人の大きな人流を創出する機会となっている。全国各地にとっても地域活性化の絶好のチャンスだ。インバウンドの地方への誘客、新たなビジネス展開、国際交流の推進等により万博のメリットを日本国土全体で享受できるよう、取り組みを進めていく。
一人ひとりの皆さま、とりわけ全国の子供たちや若者に万博を通してさまざまな体験をしてほしい。政府も一丸となり万博が素晴らしいものになり、成功するようしっかりと取り組んでいくことを約束する。
テーマ事業プロデューサー/トークセッション
〈ファシリテーター〉
◯伊沢 拓司 氏(大阪・関西万博スペシャルサポーター「QuizKnock」メンバー)
〈テーマ事業プロデューサー〉
◯宮田 裕章 氏(慶応義塾大学教授)
◯石黒 浩 氏 (大阪大学教授、ATR 石黒浩特別研究所客員所長)
◯中島 さち子 氏(音楽家、数学研究者、STEAM教育家)
◯落合 陽一 氏(メディアアーティスト)
◯福岡 伸一 氏(生物学者、青山学院大学教授)
◯河森 正治 氏(アニメーション監督、メカニックデザイナー、ビジョンクリエーター)
◯小山 薫堂 氏(放送作家、京都芸術大学副学長)
◯河瀨 直美 氏(映画作家)
伊沢 本日は8名のテーマ事業プロデューサーに、順番にパビリオンについて話を聞いていきたい。
宮田 私の担当するテーマは“いのちを響き合わせる”ということ。皆さんが未来を感じるのはどのような時だろう。それは残念ながら人間の負の側面が折り重なり、環境破壊が起きてしまった時などが多いのではないかと思う。
我々のパビリオンは天井も壁もない、万博の中心に位置する森と溶け合っている完全屋外型なのだが、ここで何を見せたいかというと、人々の行動が重なった時に負の結果だけではなく、美しいものも作れるということだ。一人ひとりの行動が重なり、虹を作る。それは未来を変えることができる、共に歩むことができるという象徴だ。石ころ型のデバイスを持って森を見ていくことで、いろんなことが起きていく。そして未来を作る、そんな展示にしていきたい。
石黒 我々のパビリオンでは人間が科学技術によってどのようにいのちを拡げていくか、50年後にどのような生活をするかを展示する。約20体のアンドロイドと、30体弱のロボットを展示するので非常に迫力のあるものになると考えている。先の人間の姿を表現したアンドロイドもいるので楽しみにしてほしい。2021年から協賛企業とミーティングを開催していて、その理論を盛り込んだシナリオが展開される。物理的なパビリオンだけではなく、バーチャルなものも準備する。パビリオンの外観は水に覆われているのだが、水はいのちの起源を表すとともに、大阪が水の都ということも示している。
中島 パビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」は言葉で説明しきれないゆらぎのある遊び場で、万人・万物に潜む創造性や、いのちの高まりを象徴する。丘の上には創造の木がそびえ、みんなのいのちの鼓動が集まると五感の音楽が生まれる。クラゲ館は、未来のいのちの楽器になる。
120歳の子供たちとともに、遊びや学び、芸術や音楽、数学やものづくり、スポーツなどを通じて生きる喜びやワクワクを感じる共創の間を作っていく。世界中を巻き込み、脈々と過去から伝わる何かを未来へとつなげていく。
落合 パビリオン「null²」は“鏡”がテーマとなっているが、日本では根源的に鏡はいのちの象徴だった。55年前の太陽の塔のモチーフだった「カラス」から「鏡」への継承が、生命の拡張と彫刻の変容を表す。
福岡 私はプロデューサーの中で唯一の生物学者なので、パビリオン「いのち動的平衡館」では、生物として生きていることがどういうことかを問いかけたい。私たち生命は、38億年前に奇跡的に生まれ、一つの細胞から出発したという壮大な流れの中にあり、この後も未来へと手渡されていく。生命観を根底から揺さぶり、生きることと死ぬことの意味と、希望を再発見する体験を届けたい。パビリオンは細胞膜がふわりと地上に降り立ったような自立的な建造物を目指している。中には光のインスタレーションを構築し、明滅によって私たちの体が光の粒子になり、38億年の生命の中に溶けこみ、また生成され死んでいくという一連の流れを展示したい。
河森 “いのち輝く未来社会のデザイン”と言うと「今は輝いていないのか?」と思う方もいるだろう。人間も植物も、どんな生き物も得意なことをしている時が一番輝いていて、生きているだけで輝いているのかもしれない。ただ、それを感じる力が少し落ちているだけではないか。パビリオン「いのちめぐる冒険」では“いのちがどこから来て、どこへ行くのか”ということを体験・体感的に、没入し感じられるようなつくりを目指す。
小山 私のところは“いのちをつむぐ”ということで、食を通していのちとは何かを考えるパビリオンだ。スーパーマーケットを巡るように、ワクワクした気持ちで見ていただきたいと思い、「Earth Mart(アースマート)」と名付けた。外観は営みの循環の象徴であるかやぶき屋根になっている。2つの売場から成っていて、1つが「いのちの売場」、もう1つが「未来の売場」だ。いのちの売場では人間がおよそ80年生きるとして、1つのいのちをつむぐためにどれだけの命をいただいているのかを改めて考えていただく。例えば日本人が一生で食べる卵の数は2万8,000個以上と言われているが、これを文字で見るのではなく、オブジェとして展示する。
未来の売場には、人がどういう食べ方をすべきかのヒントがある。最新のものだけでなく、日本の過去にも素晴らしいフードテックがあると今回改めて感じた。それを「EARTH FOOD 25」と名付け、食の未来をより良くするための、世界に共有したい日本発の食リストを発表する。
河瀬 パビリオンの名称だが、対話をもっとメインにしたいと思い「Dialogue Theater いのちのあかし」に変更した。会期中2,500くらいの対話を映画館のようなところで繰り広げるのだが、スクリーンの向こう側から出てくるのは映画のようなフィクションの存在ではなく、世界中のどこかにいる誰かだ。そこでシナリオのない対話をしてもらう。
今、すごく困難な世界情勢があるので、小さな対話を重ね、分解して未来に届けていきたい。例えば、“地球最後の日”をテーマにウクライナの人とロシアの人が対話をする。そこに答えはなくても、何かの気づきや考える余地が生まれる。自分の言葉1つで未来は変えられるし、それは過去を変えることでもある。それがいのちを守ること、自身を大事にすることにもつながるだろう。
●2025年日本国際博覧会 公式ユニフォームコレクション
イベントでは大阪・関西万博のスタッフが着用する公式ユニフォームのお披露目がファッションショー形式で行われた。大阪・関西万博シニアアドバイザーのコシノジュンコ氏はビデオメッセージで「1970年大阪万博の経験は私の人生の中でとても大きなものとなっている。2025年大阪・関西万博で優秀賞を受賞された服部さんのように、万博をきっかけに新しいデザイナーがたくさん現れ、活躍して欲しい」と語った。
応募者数369名、応募作品数513作品から選ばれたユニフォームは、多様性に配慮したデザインとなっており、性別関係なしにズボンやロングスカートの選択が可能。色は無彩色をベースに世界共通認識できる SDGsカラーをインナーに起用し、こちらも自由に選べる仕様となっている。
ファッションモデルは大阪・関西万博のスペシャルサポーターである NMB48の小嶋花梨氏、塩月希依音氏、坂田心咲氏や、俳優の桐山漣氏らが務め、ランウェイを華やかに彩った。
【インタビュー】「大阪・関西万博 開幕1年前イベント ~ぜんぶのいのちと、ワクワクする未来へ。~」を終えて
今野 水己 氏 2025 年日本国際博覧会協会 広報・プロモーション局 企画部審議役
─今回の1年前イベントですが、どのようなコンセプトで企画されたのでしょう
大阪・関西万博に対する全国的な関心を高めるため、大きく2つのことを実施しようと考えました。1つ目は、「大阪・関西万博の名前は知っているけど、どんな体験ができるのか分からない」という人は多いので、少しでも大阪・関西万博の中身について知っていただく機会を設けたいと考えました。そこで、大阪・関西万博の柱の一つであるテーマ事業を手掛ける8人のプロデューサーによるトークセッションを取り上げ、それぞれのパビリオンの中身などについて語ってもらうことにしました。
2つ目が、大阪・関西万博に向けて準備が着々と進んでいると周知することです。スタッフが着用する公式ユニフォームは、話題性があると考え、タレントの方々にもご協力いただき、イベントの形で公表したいと考えました。