受注生産型の空間ディスプレイの仕事は、案件ごとにゼロから企画立案するケースが多く、ひとたびプロジェクトが終わるとディスプレイ企業側にかたちとして残るものはほとんどない。しかしながら、これまで提供してきたサービスにはクライアントの課題解決のためのノウハウが詰まっており、有効活用しない手はないだろう。総合ディスプレイ業のフジヤはそれらを見える化したオウンドメディア「空間演出ソリューション」を開発し、新たな営業の柱と位置付ける。
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顧客の悩みに親身に応える
「クライアントの声に耳を傾け、悩みに寄り添い、キャッチボールしていく中で新たなサービスを生み出したい」。フジヤが7月20日に公開したオウンドメディア「空間演出ソリューション」の開発を担った部署である、経営戦略企画/ DX 推進統括室の中郡伸一室長は意気込む。
「空間演出ソリューション」はクライアントが抱える、リアル空間からバーチャル空間までのあらゆる空間演出における悩みを集約し、課題解決を目指したサイトだ。例えば「バーチャル展示会で商談の機会を拡げたい」という悩みに対して、フジヤがこれまで培った技術やアイデアを視覚的にわかりやすく紹介する。より具体的な提案を求めるユーザーには個別にアプローチしていけるよう設計されている。「サイト全体を通じて、フジヤに相談してみたくなる気持ちが高まるようデザインした」(中郡氏)。
社内意識にも好影響をもたらす
開発した背景のひとつには、新型コロナの影響で“空間ディスプレイ業”の根幹を揺るがしかねない問題が起こったことがある。コロナ禍でイベント業界が一丸となって安心・安全なリアルイベントを開催するための努力をしている一方で、新たな企業が参入し、オンラインやVR といったデジタル技術を駆使したプロモーションイベントが台頭し、競争が激化。それによって、より高い対応力と柔軟性が問われるような状況に変わった。中郡氏は「これまでリアル一辺倒だったわれわれの立場からしてみると、バーチャル空間でさえも当社の事業フィールドになり得るという気付きにつながり、自分たちの事業を見直すいい機会になった」と振り返る。