『EventBiz』vol.33|特集① ドーム・スタジアム・ アリーナの新しい形
近年、ドーム・スタジアム・アリーナは、スポーツ活用以外に、街のにぎわい創出や交流拠点としての役割が期待されるようになっています。本特集ではあらゆるイベントの受け皿となり得るドーム・スタジアム・アリーナの最新情報や、その発展に向けた取り組みに焦点を当てます。
2023年4月、群馬県太田市に5000人規模の新施設「オープンハウスアリーナ太田」が誕生した。コンパクトながら最新設備を導入しており、地方都市におけるアリーナのモデルケースとなることが期待される。今回、オープンハウスグループでプロジェクトを担当した横瀬寛隆・事業開発部長に施設の特徴や、未来に見据えるビジョンを聞いた。
目次
- B1 を目指しアリーナ新設へ 建設・運営・利用を一体的に
- 企業版ふるさと納税活用し整備費44億円を市に寄付
- コンパクトでもビッグなビジョン 海外を参考にして日本一を目指す
- さまざまなイベントを誘致し地元から愛されるアリーナに
B1 を目指しアリーナ新設へ 建設・運営・利用を一体的に
─オープンハウスアリーナ太田オープンまでの経緯について教えてください
オープンハウスグループは2019年6月に、当時バスケットボール男子B リーグ2部(B 2)だった群馬クレインサンダーズ(以下、サンダーズ)の運営会社である群馬プロバスケットボールコミッションを子会社化しました。そして B 1を目指すことになったのですが、B リーグが将来構想として掲げた B 1基準を満たすため、試合の日程を最優先で確保できる5000人規模のホームアリーナが必要になったのです。
そこで、群馬県の自治体にヒアリングを行うことにしたのですが、ちょうど体育館の建て替えを計画していた太田市と条件が合致したため、新アリーナを建設することに決まりました。それが2020年初頭のことです。そして3年という年月をかけ、2023年4月、オープンハウスアリーナ太田は無事にオープンすることができました。
─建設が決まってからオープンまで非常に早かったですが、その間にどのようなことをされていたのでしょう
建設が決まり、まず市場調査を行いました。地域に必要とされるアリーナの役割は何かというところで、収容人数8000人や1万人という案もあったのですが、人口22万人の太田市の需要に合った5000人規模の施設の方がいいだろうという結論に至りました。事業スキームとしては企業版ふるさと納税を活用し、総事業費82.5億円のうち44億円をオープンハウスグループが太田市に寄付する形をとりました。
2020年4月から6月に設計・施工者を公募し、7月から2021年6月までが設計期間、2021年7月から2023年4月までが工事期間でした。その間、2021年5月にサンダーズが B1に昇格し、7月に本拠地を大田市に移しました。また、2022年12月にはアリーナの指定管理者法人である群馬シティマネジメントを設立するとともに、ネーミングライツも取得しています。
つまり、オープンハウスグループは①整備費の寄附(建設)、②オープンハウスアリーナ太田の指定管理(運営)、③ホームチームであるサンダーズのマネジメント(利用)という3つを一体的に行っていると言えます。
企業版ふるさと納税活用し整備費44億円を市に寄付
─先ほど企業版ふるさと納税の話がありましたが、スタジアム・アリーナ整備費の調達方法としてはかなりユニークだと思います。なぜこのような手段を取ったのでしょう
ちょうど2020年4月に企業版ふるさと納税の企業負担が4割から1割に引き下げられました。そこから制度に興味を持ち前例を調べたところ、他の自治体でもスポーツ施設のリニューアルに対して民間企業が寄付を行っている事例があると知り、自分たちにもできるのではないかと思い、太田市に相談を持ちかけました。太田市の担当者も制度はご存じのようでしたが、金額が大きいため驚いたようです。とはいえすぐに内閣府への申請準備を行っていただけたので、助かりました。元々体育館の建て替えに必要な予算が30 ~ 40億円だったため、企業版ふるさと納税の44億円で B リーグに必要な機能を上乗せしたイメージです。
─企業版ふるさと納税を使うメリットをどこに感じましたか
44億円の寄付のうち実質負担は約4.4億円ですので、仮に完全に民間で新築した場合と比べると経済的な
メリットは非常に大きかったです。