『EventBiz』vol.24|特集① イベントはテクノロジーで“こう”変わる
いかに驚きや感動を与え、体験価値を向上させるか。イベント主催者の使命達成を支える立場として、技術者たちは日々イベントテクノロジーの開拓に奮励する。特集ではテクノロジーの使い手と作り手にフォーカス。テクノロジーを使ったユニークな発想や体験のほか、それらを実現させた数々の技術を紹介する。
コロナ禍前は、顔を映してオンライン上で通話や会議をすることに抵抗があった。けれども、感染対策や移動の制限が敷かれておよそ1年半。私はすっかりZoomやアプリを使って画面に顔を映すミーティングに慣れてしまった。ワクチンが普及しつつあるとはいえ、その脅威から世界が解放されたとは言い難い。そして完全に安全が確保された世の中が訪れたとしても、手軽に移動せず誰かとコミュニケーションをとれるオンライン会議ツールはなくならないだろう。これらが今後も残っていくものだとすると、どのように進化を遂げてゆくのだろうか。近い将来、会議をするだけではなく、遠隔地のイベントに参加できるかもしれない。そんな未来への想像のヒントは、iPresenceのテレプレゼンスアバターロボットたちがくれる。同社のサービスによるロボットを活用したイベント参加の魅力と見据えるビジョンについて、丸山聖子氏に聞いた。
丸山 聖子 氏
iPresence
Remote Presence Specialist
[Contents]
オンライン会議の先にあるコミュニケーションの形とは
iPresence はリモートコミュニケーション×先端技術のスペシャリスト集団として、テレプレゼンスアバターロボット(テレロボ)を活用したソリューションの提供やシステム開発、空間のデジタルツイン化などを日本とイギリスで行っている。
コロナ禍が続く今日、特に注目されているのが「テレプレゼンスアバターロボット」を使って、非対面でのコミュニケーションや、遠隔でのイベント参加を「まるでその場にいるかのように」実現するサービスだ。同社のサービスでは主に、コミュニケーションロボットの「kubi(クビー)」や「temi(テミ)」を使用するが、通常の Web カメラを使ったオンライン会議とは一味違うらしい。
「kubi」は、タブレットスタンドのような卓上型のロボットだ。Webカメラと変わらないのでは? と疑ってしまうようなビジュアルである。けれど侮ることなかれ。名前は日本語の「首」を由来としており、左右300°上下90°自在に稼働するため、操作者はカメラを通して空間全体を見渡すことができる。また会議中、タブレットに映し出された操作者の顔の動きと kubi の動きを連動させることができる。
「temi」は AI と16のセンサーを搭載し、通話はもちろん、操作者は遠隔で temi を通して空間内を自由に歩き回ることができるというのだ。(走行は屋内の平らな床面を想定)障害物回避のほか、temi 本体のセンサーに触れた人に自動でついていく機能(追従機能)、temi で走行した場所の地図を自動生成する3D マッピング機能、自律走行機能もある。こうした彼らの機能とiPresence の開発したシステムにより、オンラインでのイベント参加や会議でありながら、それぞれ別の場所にいる人達が、同場所にいるような、よりリアルに近い感覚を得られるという訳だ。丸山氏に、立命館大学の同窓会で使用されたときの動画を見せてもらった。海外に在住しており、会場に来られない BOG が temi でイベントに参加していた。大学のユニフォームを着てガイドの人についていく temi には、どこか愛嬌がある。
動画内でも初対面の人を含め、多くの参加者が temi を通して操作者に話しかけており、親しみやすさがあるのだろう。丸山氏によれば「操作する人の顔が temi のタブレットに映っているので、話しかけやすいのだと思います。ロボットというよりは生身の人間だと、みなさん認識しているようです」とのことだ。