『EventBiz』vol.21|特集 2021年イベントトレンド予測
新型コロナウイルスの影響から、2020年の春先から早急な変容を求められたMICE業界。現在も感染防止のケアだけでなく、代替案となるオンラインやハイブリッドといった新様式への対応が進んでいる。さらにデジタル・トランスフォーメーション(DX)やニューノーマル体験、SDGsなど、主催者は日々様変わりする社会情勢に対応した変化が求められる。そこで今回は2021年、イベントを開催するうえで押さえておきたいトレンドを紹介。変化に素早く対応した企業事例や、まだイベント業界に浸透しきれていないものの、今後注目が高まるコンテンツを紹介する。
新型コロナの影響によるイベントの開催中止・延期が全国的に広がったことで、開催リスクを警戒する動きはさらに強まっている。イベントにおけるリスク軽減の方法の中で、思い浮かぶのが保険への加入だが、実情はどうなっているのだろうか。イベント保険に詳しいほけん設計・副社長の長尾博康氏に保険の基礎知識と現状を聞いた。
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─イベント保険自体の認知度や加入状況について教えてください
当社は保険代理店なので、私どもに話がきた時点で主催者や運営者の方は既にイベント保険への加入を検討しています。特に法人などが企画運営するイベントではかなりの認知度があるのではないでしょうか。また、法人でなくとも祭りの運営委員会などが加入する場合もあるため、ある程度きちんとした運営が行われているイベントではイベント保険に加入するケースが多いでしょう。
─イベント保険の中でも代表的な「興行中止保険」とは何でしょうか
ここでいう興行とは非日常性を伴うもので、プロ・アマスポーツ大会、スポーツ以外の競技、花火大会、お祭り、舞台演劇、伝統芸能、ファッションショー、博覧会、展覧会、コンサートなどが対象です。興行中止保険は定型のパッケージ商品は存在しますが、補償できる危険が極めて限定的であり補償金額も大きくないため、基本的には契約毎にオーダーメイドで、契約時に個別に約定した事故に対し保険金を支払います(列挙危険担保という)。保険証券に記載する条件は保険会社と契約者で打ち合わせを行い決定するので契約毎に支払条件が異なることになります。
保険金が支払われる主な事故原因としては①悪天候またはその恐れ、②出演者の役割遂行不能、③火災などの偶然な災害が挙げられます。保険料算出にあたっては「保険会社指定の質問票」「興行の概要説明書」「興行の収支計画書」「開催場所の説明資料」「興行を中止とする場合の判断基準」などの資料を提出した上で保険会社が計算します。なお保険契約には損害防止意識を高めるためなどの理由から、免責金(自己負担額)や縮小支払といった条件を設定することがあります。ある程度の自己負担を設定することで事故削減効果を高めるねらいがあります。縮小支払とは保険金認定額に対して縮小して保険金をお支払いするというもので、例えば1,000万円の保険金認定がおりた場合に縮小支払割合90%が設定されていた場合は1,000万円×90%=900万円が実際に支払われることになります。火災保険や賠償保険などでも縮小支払割合を設定することは珍しくありません。