自己を守る意識が事故防止の出発点[イベント・展示会安全施工推進会]

コラム
本記事は2023年8月31日発行の季刊誌『EventBiz』vol.32で掲載した内容をWEB版記事として転載および再編集したものです。掲載されている内容や出演者の所属企業名、肩書等は取材当時のものです。

イベントの施工を手掛ける企業らで構成される「イベント・展示会安全施工推進会(ESP)」はイベントや展示会の施工現場における労働災害防止のため、会員同士の情報共有を密におこなっている。2023年8月に開催した安全大会では、会員企業内で発生した事故事例を収集し、原因分析・情報共有を図ることで、再発防止に努める。本記事では ESP の取り組みから、安全に対する考え方を学び、理解を深めたい。

再発防止のための事故分析

事故が発生し、その事故原因を分析する際に必要な要素は「起因物」と「事故の型」である。起因物とは、事故をもたらすもととなった資材や機械、あるいは環境のこと。事故の型とは、起因物が関係した現象や結果のこと。たとえば「脚立がぐらつき、脚立上から転落した」場合の起因物は「脚立」であり、事故の型は「転落」となる。起因物の検証と事故の型の検証をおこなうことで、事故防止重点対策を明らかにすることができる。

ESP では会員企業間で、過去に発生した事故データを保管・共有しており、安全大会で事故の分析結果を発表し、再発防止に努めている。ESP が2016年から2018年までの3年間で集計したデータによると、起因物について主なものは「組立・解体時の部材」「作業環境・天候」、「備品・単体物」、「台車・キャスター付き什器」、「道具・工具」であり、事故全体の約6割を占める。また事故の型について主なものは「挟まれ・巻き込まれ」、「熱中症」、「切れ・擦れ」、「飛来・落下」、「動作の反動・無理な動作」であり、事故全体の約7割を占める。

また2022年から2023年までの最新事故データについては「台車・キャスター付き什器」、「組立・解体時の部材」、「車両関係(パワーゲート含む)」、「資材・材料等」、「荷扱い」が主な起因物で、「飛来・落下」、「挟まれ・巻き込まれ」、「動作の反動・無理な動作」、「転倒」、「切れ・擦れ」が主な事故の型であるとした。具体的な事故事例は「カゴ台車で手を挟む」、「解体時の部材の落下」、「工具で指を切る」などを挙げた。

実際の業務現場における心構え

労働災害の主な原因のひとつがヒューマンエラーによるものとした上で、それを起こさせないよう、会員企業では日頃から以下のような取り組みを実施している。

● 朝礼・昼礼・終礼で、その日の作業目標や注意事項を共有する
● ヘルメットや手袋などの安全保護具は完全着用する
● 危険予知(KY)活動で、作業前に危険な要素を予測し対策を立てる
● 落下事故などのリスクがあるため、上下作業を禁止する
● ツールボックスミーティング(TBM)で全員が認識を共有する
● ユニフォームの袖まくり・裾まくり禁止
● 声掛け励行によってコミュニケーションを活発におこなう
● 作業手順を厳守し、効率的かつ安全な作業をおこなう
● 5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動で作業効率を高める
● ヒヤリハット報告によって未来の事故防止につなげる
● 指差し呼称によりミスを減らす
● 安全パトロールで状況を確認し、安全管理のレベルを高める

とはいえ業務請負の現場の場合、その多くはクライアント側が用意する作業環境で仕事をおこなうという特性上、突き詰めたリスク軽減策を講じることが困難といえる。そのため、事故リスクが存在することを前提に、その中で自身を守る強い意志をもち仕事と向き合うことの重要性を強調した。

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